成功はゴミ箱の中に〜レイ・クロック自伝 / レイ・クロック

画像引用:Amazon

マクドナルドの実質的創業者、レイ・クロックの自伝です。

帯の推薦文には、柳井正氏と孫正義氏により「これが僕たちの人生のバイブル!」と書かれていますが、一般のビジネスパーソンが、本書からヒントを得ると言うよりは、起業を目指す人が、起業家精神のようなものを学ぶのに相応しい著作と言えそうです。

マクドナルドは、マクドナルド兄弟が地方都市で始めたハンバーガーショップがその起源ですが、当時すでに、現在のマクドナルドの原型、すなわち効率的な店舗設計や、調理方法のマニュアル化による品質の安定などの仕組みが出来上がっていました。

その仕組みを、全米に拡大させ、なおかつ、仕組みにバラつきが生じないよう、全地域、全世界、どこでも同じサービスや味が得られるよう標準化し、世界規模でのファストフードチェーンを作り上げたことが、レイ・クロックの最大の功績です。
それだけの大仕事を、51歳から起業し成し遂げたことにも驚かされます。

また、日本と米国での、起業に対する考え方の違いも興味深いものがあります。
米国のフランチャイジーは、日本のように脱サラした個人が地元で単独店舗を運営するのと違い、複数の仲間で複数の店舗を広範囲に運営する、地域企業体を作り上げています。
それぞれのフランチャイジーが、レイ・クロック同様おう盛な起業家精神で、フランチャイズに参加している点が、日本とは大きく異っているようです。
そのベースには、商品の提供で儲けるのではなく、フランチャイズシステムを拡大することで、フランチャイジーとともに成長しようとしたクロックの経営哲学があります。
サブタイトルにある「世界一、億万長者を生んだ男」には、フランチャイジーを儲けさせたという自負が込められています。

当然、システムだけではなく、味やサービスといった本質的価値についても、手頃な価格で最高の味とサービスを実現するため、地道でアナログな努力を積み重ねてきたこともわかります。
ポテト一つをとっても、保管方法から油の温度や揚げ方まで、試行錯誤を重ねた末に生み出されました。

一方で、マクドナルド兄弟との対立や創業時からの仲間との不和も赤裸々に述べられており、人間臭い自伝でもあります。
とりわけ驚かされるのが、糟糠の妻がありながらの人妻とのダブル不倫です。
恋愛への熱情を押さえきれず、不倫相手に求婚したものの拒絶され、それでも未練タラタラに思い続け、そうかと思うと、あっさり別の女性に恋をし、糟糠の妻とは離婚。
ところが最初に不倫した女性と再会するや、二度目の妻ともあっさり離婚し、遂に略奪婚で当初の思いを遂げるという、純愛と言えなくもないですが、今の世の中だったら、ただのクズ野郎と思われそうな所業も赤裸々に語っているのが、本書の面白いところです。

晩年は、慈善事業に資産をつぎ込み、様々な社会貢献をしますが、事業家としての貪欲な成功欲と功成り名を遂げてからの社会貢献の姿は、まさにアメリカンドリームです。

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