常連コンプレックス

いよいよワクチンの接種が始まりましたね。
義母にも案内が届きましたが、高齢者にはなかなかハードルが高いようです。
世の中の人はすべてスマホが使えるのが前提になっているようですが、
PC世代の私でさえ、未だにスマホの操作にはストレスを感じます。
(フリック入力ができないからって、何だってんだ!)

ネットでは接種場所が指定されていて、
どこでも自由に受けられるようにはなっていないんですが、
実際はそうでもなさそうなんですね。
予約が×印になっていたり、
そもそもリストに載っていない個人病院でも結構OKみたいなんです。

ネットでは×がついていた義母のかかりつけ医に電話すると、
意外とあっさり予約がとれました。
“常連客”の分はちゃんと確保されているみたいなんです。
ありがたい反面、日頃の付き合いみたいなのが、
生死の分かれ目になっても良いの?って思っちゃいますよね。

刑事モノなんかで、行きつけのうどん屋のおやじに向かって、
「ねえ大将、首相官邸のセキュリティーカードを用意してくれないかな」
とか声を潜めて頼むと、当然ながら、
「勘弁して下さいよ、お客さん。アタシはうどん屋ですよ」
とか言いながらも、合言葉をつぶやいた途端、
「裏で待ってな」とか急に怖い顔になって、
「1枚100万円、現金だけだ。ペイペイは受け付けない」
って、生めんの下からカードを引っ張り出してくるようなシーンを
ついつい思い浮かべてしまいます。
(すみません。どうしても例え話を書きたかったものですから)

さて、
若い頃から”行きつけ”とか”常連”とかいう言葉には複雑な感情を持っています。

そもそも、
①ケチ
②おウチ大好き
③社交性なし
の三重苦ですから、”常連”とか絶対手の届かないステイタスなんです。

よく飲み会の後「じゃあ次は私の行きつけの店で」とか言われて
二次会に連れていかれることがありますが、”行きつけ”って言葉の響きも、
なんかなくかっこよく聞こえちゃうんですよね。
どうしたら常連になれますか?ってつぶらな瞳で教えを乞いたくなります。

一方で、常連客って存在には反発も感じてて、
食レポ番組なんかで、
「実っつは!この店、常連さんしか知らない裏メニューがあるんですぅ」
みたいなのがありますが、
常連じゃない客に見とがめられて、
「パパ、あのおじちゃんと同じ、プロバンス風チーズ牛丼が食べたい」
とか言い出されたら、なんか気まずくならないんでしょうか。

でも自分が常連客になって、そっと裏メニューなんか出されたら、
絶対、目が星みたいにキラキラ光っちゃうんでしょうね。
ああ、いやだ、汚らわしい。

いっそのこと、JALのグルーバルクラブみたく、
年間50回以上通ったら、「常連証」を差し上げます、
みたいに明確にルール化されてる方が正々堂々と常連を目指せる気もします。

けど実際は、常連になりそうになると、
店の人と雑談なんかするのが煩わしくてなって、
すぐに違う店に行きたくなるっていうめんどくさい性格なので、
絶対”行きつけの店”なんか持てないんじゃないかとも思っています。

若い頃、テイジンメンズショップが御用達だったんですが、
顔見知りができて「新作入りましたよ」とか言われると、
買ってあげなきゃ、っていうプレッシャー”が苦痛になり、
すぐに常連をあきらめたことが何度かあります。

こんな複雑な乙女心を、
私は、”常連コンプレックス”と名付けることにしました。

そう言えば、常連らしきお店が一軒だけあって、
この2年程は、コロナの関係もあって利用してないんですが、
鳥栖に、20年ほど通っている「Vie Vie」って言うフランス家庭料理の店があります。

ご夫婦が山奥で営んでいる店なんですが、
オーナーシェフのご主人の顔は一度も拝見したことがありません。
ホール担当の奥さんは、20年間まったく変わらぬ口上で、
ほぼ変わらぬコース料理の説明をしてくれます。

毎回同じだから省いてくれてもいいんだけど、って思ってたんですが、
何度も聞いているうちに、いつしか儀式みたいにな存在になってしまいました。
口上が始まると、家族全員祝詞を聞くときみたいに、
うんうん頷きながら厳粛に聞き入っています。

ひところ家族の間で、奥さんの口上をマネするのが流行ったんですが、
内容は毎回も聞いてわかっているのに、
投球フォームを盗まれてたまるもんか、っていうプロ意識に阻まれ、
なかなか正確にマネできませんでした。

本当は、どこかの国のスパイで、
お客に印象を残さないような訓練を積んでいるんじゃないかって思ったほどです。

で、この奥さんですが、通い始めて10年ぐらい経ったころようやく、
他にお客さんがいないことを見計らって、個人的な話題を振ってこられたんです。
常連コンプレックスの私はほぼ喋らず、妻が受けてたってましたが、
結構盛り上がってましたので、本当はお喋りを我慢してたのかしれません。
どうやらスパイではなかったようです。

要するに、ホストとゲストの間には、適度な距離感が存在する方が、
より寛げる空間が築けるんじゃないかってことを言いたいわけですよ。

結局、常連になるより、井之頭五郎の方が気が楽なんです。
けど、私の場合は小食で、五郎さんみたいに一人で何品も注文できないので、
次の出張も、松屋かファミレスでの「孤独のグルメ」になっちゃうんでしょうね。

ところで、
尾身会長はいつも泣きそうな顔をしてますよね。
あんな顔されたら「みんな、尾身君のためにも、もっとちゃんとしようよ!」
って言いたくなりますが、
菅さんは、隣に立ってて何とも思わないんでしょうか?

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