新しい言葉、古い言葉

冬の間、孫をチャイルドシートに乗せる時「寒かろー」と言いながら膝掛をかけていたら、
彼は、膝掛のことを「サムカロー」と呼ぶようになってしまいました。

人類が言葉を使い始めた頃も、そうやって新しい単語を編んでいったんですよ、きっと?

孫が生まれてから、30年ぶりの子育気分を味わってるんですが、
育児用語が刷新されていることには戸惑いました。

「そこの”ヌーク”とって」って言われても、最初は何を指しているのか理解できませんでした。
“ヌーの群れ”は、ライオンキングでよく出てきますが、ヌークって何?
若い母親は、おしゃぶりじゃなくて、ヌークって呼ぶんです。

これってドイツのブランド名らしいんですが、
唾でべちゃべちゃになった、ぬちゃーっとした感じは、よくでています。
そう、最近おしゃぶりを担当しているのは、ドイツ人なんです。

よだれかけは、”スタイ”に取って代わられてました。
しかも、昔と違いシリコン製のおしゃれなデザインです。
名前からして、スーツを着込んだアメリカ人に違いない、と思ったら、
どうやら英語ではなさそうです。
語源が定かでないので、担当は、国籍不明の外国人です。

カトージ(ベビーチェア)って聞いた時、頭の中では”可倒児”っていう単語に変換されていました。
言葉の響きから察するに、スラブ系の東欧人だと思ってたんですが、
HPで確かめたら、”加藤治”っていう誤変換みたいな本名を持つ、れっきとした日本人でした。

モンテッソーリ(教育)って聞くと、モンテスキューとムッソリーニが合体した怖い先生が、
ムチを手にして子どもたちを躾けている姿を連想してしまいます。

新しい言葉を、おう盛に吸収し始めた三歳児は、
知らない言葉を耳にすると、すぐに質問してきます。
ディズニーのアニメを見ながら「”あまぞん”ってなんだ?」とか「”わしのたから”ってなんだ?」とか、
しきりに聞いてきますが、
時折「”いきる”ってなんだ?」とか「”じんせい”ってなんだ?」とか、
尾崎豊でも答えが出せなかったような深淵なテーマについて聞かれると、
どうごまかすか困ってしまいます。

子どもとは対照的に、新しい言葉がなかなか覚えられないジジイですが、
ずっと昔記憶した、どうでもいい言葉は何故か大脳皮質に定着しています。

高校生の頃、受験勉強で暗記した人名にトルコ建国の父の名前ってのがありまして、
ケマル・アタチュルクって言うんですが、別名がムスターファ・ケマルパシャって言うんです。

大学入試から数十年経って、当時暗記した人名はほとんど忘れてしまったのに、
何故、トルコ建国の父だけ覚えているのか、自分にとってそんなに重要な人物だったんでしょうか、
不可解です。

いつかトルコ人と飲みに行く機会があったら、日本人は、みんなトルコ建国の父の名前を知ってるんだぜ、
って喜ばせてやろうと思ってるんですが、未だにトルコ人と飲みに行く機会は巡ってきません。

さて、この春から幼稚園に入園する孫は、入園日の朝から張り切っています。
「おおきなとぅべりだい(=すべりだい)にのるんだ!」
とテンションが上がってますが、明らかに、”ヨーチエン”を”ユーエンチ”を勘違いしているようです。

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