
以前、ソニーの復活を演出した平井一夫氏に関する著作「ソニー再生」を取り上げましたが、本書は平氏氏に遡ること4代前の社長、出井伸之氏に関する著書です。
出井氏の方は、どちらかと言えばソニーの凋落に歯止めをかけられなかった張本人として語られることが多い人物です。
一方本書は、出井氏が、その後のソニーの復活劇のために、地ならしのような役割を果たした人物として位置付けています。
代々創業メンバー関係者が社長を務めてきたソニーで、初めてのサラリーマン社長となったのが出井氏ですが、社長になるまでの氏のサラリーマン人生は決して平坦なものではなく、人一倍の熱意はあれど、”出過ぎた杭”だったため、二度の左遷によるサラリーマンの悲哀を味わっています。
一度目は、パリでの華々しい活躍から帰国した直後の物流センターへの左遷、二度目は、ほんの些細な舌禍が招いた、今でいう追い出し部屋(出井氏一人と机と椅子だけの部署だったそうです)への左遷でした。
雲の上の人かと思いきや、平凡なサラリーマンが大なり小なり味わいそうな経験をされていることに、共感を覚えます。
出井氏は、ソニーでは初の文系出身社長であり、出井氏以前の技術至上主義、製造至上主義に警鐘を鳴らし、デジタルへと大きく舵を切った社長でもあります。
ソニーのような革新的な企業であっても、過去の成功体験の呪縛からはなかなか逃れられず、出井氏と技術者との間には確執があったことが窺われます。
デジタルに舵を切らなければ生き残れないという出井氏の危機感が、現在のソニーの復活に繋がったのですが、本書の終盤では、出井氏自身に真意を語らせています。
アジアで最も必要とされているのが、日本の製造業であり、製造業否定は誤解であること。
但し、製造業神話からの脱却、成功体験からの脱却は不可避であり、モノづくりを過信してはいけない。
製造業が全てを解決してくれるわけではない。
製造業とITの組合せこそが重要であると、出井氏は語っています。
毀誉褒貶のあった出井氏のソニー統治を回顧することで、日本の技術製造とITの未来が見えてくるように思えます。
