
気候変動による地球の破滅への解決策として、マルクスの思想に基づく「脱成長」を提唱する異色の書です。
SDGsであれ、グリーンニューディールであれ、成長や生活改善の持続可能性を前提とする限り、結局資本主義の枠からは出られず、気候変動をあらたなビジネスチャンスとみなす利潤の追求が、さらなる資源の枯渇を招くと作者は批判しています。
根本的な解決策は、資本主義を捨てあらたなシステムを構築することであり、そのためには、民間企業により寡占化された生産体制を、市民による自治的活動に移管することを提唱しています。
人々が富を共有し、環境を含めた地球資源を、市民の力で管理しようと言うのです。
そのような社会の在り方を、作者は「コモン」(共)という概念で呼んでいます。
当然、成長は停止し、技術の進歩と環境破壊によって手に入れた快適な生活様式は捨てざるを得ません。
代わりに労働時間を短縮し、余暇時間で心の豊かさを取り戻す、「脱成長コミュニズム」の世界を到達点としています。
具体的な解決策として、以下を提案しています。
①使用価値経済への転換→ブランド価値やそれを高めるためのマーケティングは資源の無駄遣いであり、使用するための価値だけを備えた商品を流通させる
②労働時間の短縮→単純労働を機械化により置き換えるが、そこから得られた労働者の余剰時間は、さらなる過剰生産には振り向けず、心の豊かさを高めるために使う
③画一的な分業の廃止→労働を義務ではなく、やりがいのある活動に変えていく
④生産過程の民主化→資本家による利益の追求のための生産をやめ、市民の自主管理のもと、必要なモノを必要な量だけ生産する
コミューンの在り様にも似ていて、牧歌的な夢物語にも聞こえますが、現在世界にはびこる自国第一主義や、それに起因した気候変動対策の後退を見るにつけ、著者の主張には頷ける点が多々あります。
但し、世界中の人々が一斉に、現在の物質的な豊かさを「せ~の」で手放さない限り、資本主義の放棄は困難なのかもしれません。
会社の経営に携わっていると、”成長”が本当に必要なのか疑問に思うことがあります。
成長を持続するために払うべき犠牲は大きく、効率化のために誰かを切り捨てた結果、残った誰かの取り分は増えるが、さらに大きな負荷を背負うことになるのが、人間の生き方として本当に正しいことなのか。
地球規模の問題に目を移しても、同じような矛盾が横たわっており、たとえ理想論であっても、脱成長を提唱する本書には耳を傾け価値はあると思います。
