30年後の同窓会

画像引用:Amazon

Amazonプライムオリジナルで、原題は「Last Flag Flying(最後の軍旗掲揚)」です。
「さらば冬のかもめ」の原作を書いたダリル・ポニクサンが、
その続編として2005年に書いた小説が原作になっています。
あくまでも精神的な続編なので、登場人物は同じではありませんが、
キャラクター設定や話の展開は「さらば-」を彷彿とさせます。

これだけで、年齢の高い映画ファンには、空気感が伝わるかと思います。

監督は、「6才のボクが、大人になるまで」で高く評価されたリチャード・リンクレイターです。
私と同じ世代なので、間違いなく「さらば-」に感動したクチだと思います。

時代設定はベトナムから30年後、9.11の数年後、フセイン政権崩壊の前後です。
バグダッドで戦死した息子の遺体を、
30年間疎遠になっていたベトナム戦争の戦友二人とともに引き取りに行く孤独な男の話なんですが、
ある理由により息子が英雄としてアーリントン墓地に埋葬されることを拒否し、
自分の家に連れて帰って、亡き妻と同じ墓地に葬るまでを描いたロードムービーです。

3人の関係は微妙で、過去にわだかまりがあったようですが、
その理由は言葉の端々から想像できるだけで、最後まで明らかにはなりません。
しかし、短い旅路の中で、過去のわだかまりは徐々に解けていきます。

3人が盛り上がる昔話には時代錯誤を感じさせ、
戦争と愛国心へのスタンスにも曖昧さが残るため、
「さらば-」と比べるとやや緊張感に欠けるのは否めません。

勝手な想像ですが、原作者のポニクサンも9.11を経験し、
「さらば-」当時の思いに変化が生じたのかもしれません。

この辺りの曖昧さや時代感覚のズレは、
若い映画ファンからは辛辣な批判を浴びそうですが、
アメリカンニューシネマ世代にとっては、この空気感が心に沁みるんです。

リンクレイターは今が旬の監督ですから、
時代感覚のズレなど百も承知で、あえてニューシネマの空気感を作り出したんじゃないか、
っていうのが私の勝手な推理です。

どうせなら邦題も「さらば冬のかもめ」みたいに、
甘酸っぱい題名にしてくれたら、もっと良かったんじゃないかと思います。

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