テレビでも見ようか

最近マンションを購入した友人Aのもとを友人Bと訪れ深酒した翌朝、二日酔いでA宅のソファーから起き上がれないBが息を吹き返すまで手持無沙汰な私に、Aがテレビでも見ようよと誘ってきました。
テレビを囲んだ家族団らんが消えて久しく「テレビでも見よう」というセリフも新鮮に聞こえますが、ジジイが二人ソファーに並んでテレビを見る姿はシュール過ぎます。

Aはお気に入りの番組を録り溜めしておいて、休日に一気見するのを楽しみにしているとのこと。
彼のお気に入りは「めざましテレビ」のミニコーナー「紙兎ロペ」です。
高校2年生の紙兎”ロペ”と高校3年生の紙リス”アキラ先輩”が主人公のショートアニメですね。

ロペとアキラ先輩の緩い世間話が中心の脱力系アニメなんですが、面白いのか面白くないのかよくわからないコーナーなので、前々から、これって需要があるのか?と思っていたんですが、このコーナーだけを録り貯めしている人物までいますから、立派に需要があるんです。

Aは、二十代の頃谷岡ヤスジの不条理マンガに心酔していて、布教活動よろしく、ヤスジのマンガがいかに面白いかを、一コマ一コマ身振り手振りを交え説明してくれるような人だったんですが、そんなに面白いなら、と思っていざ読んでみると、結局、Aが興奮して語っている姿の方がマンガより面白くて、実際のマンガの方は、どこがそんなに面白いのかよくわからない、というオチがついていました。

さて、「紙兎ロペ」を立て続けに何本も見せられると、徐々に自分の笑いのツボが調整されてきて、実は面白いんじゃないかな、などと思えてくるから不思議です。
現役時代のイチロー選手が何本もファールで粘った挙句、最後にタイミングが合ってヒットを打つような感じでしょうか(全然違います、はい)

子どもの頃「テレビばかり見ていたら、バカになるよ!」といつも怒られていましたが、最近は、etflixの血しぶき飛び散るダークファンタジー見ている私の横で、妻がスマホにイヤホンで韓流のラブコメを見ていたりと、一つの番組を誰かと一緒に見ながら、同じ時間を共有することがなくなってきています。
テレビって結構人と人との絆を紡いでいたのかも、などとロペとアキラ先輩の掛け合いを見ながらヘラヘラ笑っている、40年前と同じ精神年齢で、外見だけがジジイになった友を横目で見ながら感傷に浸る夏の日でした。

タイトルとURLをコピーしました