
「オッドタクシー」の木下麦監督と此元和津也脚本のコンビによるオリジナルアニメ作品です。
Netflixの配信で鑑賞しました。
中間管理職的な立場のヤクザと、夜の世界で生きてきた女、それに女の連れ子の3人が、海辺の街で暮らし始めます。
男はヤクザゆえに籍を入れることをためらい、素直に愛情を表現することもできないながらも、3人は家族としてつましく暮らしていきます。
やがてバブルで羽振りがよくなった男は、家を顧みなくなりますが、ある日、女と子どもに悲劇が降りかかります。
男は自分の一生を犠牲に、女と子ども救い監獄で独り一生を終えると言うお話です。
あらすじを綴ると、周縁に置かれた男女の、哀しくつましい人生を描くありがちな物語に感じられますが、それだけで終わらないのが此元脚本の凄味です。
男女の背負ってきた人生についても説明はなく、二人の心情についても多くは語られませんが、登場人物たちの思いが胸に迫ってくるのは、アニメ表現の美しさに支えられた、演出と脚本の見事さ故に他なりません。
クライムストーリーとしての側面も見逃せません。
ちょっとしたギミックや伏線が仕掛けられていて、それが回収された時「ショーシャンクの空」のようなカタルシスが待っています。
時折挿入される、♪スタンド・バイ・ミーも効果的です。
毒舌を吐くホウセンカと男とのユーモラスな掛け合いもまた、物語に独特の可笑しみと味わいを与えています。
ホウセンカは、三人が平穏に暮らしていた家の庭に咲いていた花であり、男が一生を終える時、傍らに生けられていた花です。
生まれて間もない子どもと、死期が迫った者だけけにホウセンカの言葉が聞こえるという設定です(ピエール瀧さんの声の演技も素晴らしい)
鑑賞後に切なさが残りますが、ヤクザや犯罪が絡みながらも、美しさと暖かさが心の琴線に触れる傑作アニメです。
