君の誕生日

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はちどり」でもフィクションと実際の事故が交錯していましたが、本作の主人公の男女は、日本でも大きく報じられた海難事故により、子どもをなくした夫婦という設定です。

事故については間接的にしか言及されておらず、時間とともに悲劇が風化していく現実や、変化していく世の中と当事者の気持ちのズレも取り上げられていますが、主題はあくまで、事故後の被害者の心情についてです。

かけがえのない存在を亡くしたことによる喪失感や夫婦のすれ違い、何年経っても悲しみと折り合いをつけることができない、残された者の心情を丁寧に描いています。

119分の大半がそんな鬱々とした描写なので見るのが辛くなりますが、最後の約30分に救済が待っています。

その30分を本当に救済と呼べるのか、所詮キレイごとじゃないのか、と疑念も頭をもたげますが、こればっかりは、当事者でない限り否定しきれるものではありません。

救済に至るまでの描き方がとても丁寧で真摯であるが故、否が応でも主人公夫婦に感情移入してしまい、ラスト30分は、頭の片隅に批判的な気持ちを燻らせながらも、誰もが涙を禁じえないはずです。

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