スケアクロウ

画像引用:Amazon

2月末でUnextの3ヶ月無料体験が終わったんですが、他の動画配信では見られないような地味な作品もラインアップされており、最後に選んだのが、中学生の頃映画館で鑑賞して痛く感動した本作です。

1973年制作の、所謂アメリカンニューシネマの傑作のひとつです。

当時は斬新でスタイリッシュだった演出も、現在の感性では古臭かったり、違和感を感じたりする点もありますが、アメリカンニューシネマが好んで描いた、優しく不器用な人々の、繊細で壊れやすい心情は、50年経った今でも色褪せない輝きを放っています。

約2時間の尺ですが、ドラマチックな展開はありません。
刑務所を出所したばかりのマックス(ジーン・ハックマン)と、陸に帰還した船乗りのライオン(アル・パチーノ)が偶然出会い、旅する中で心通わせていく過程が淡々と描かれていきます。

気性が激しく不器用なマックスに対し、ライオンは優しく繊細ですが不安定です。
案山子(スケアクロウ)は、カラスを怖がらせて畑から追い払ってるんじゃなくて、笑わせることで「こんな良いヤツの畑は襲っちゃダメだ」って思わせているんだ、っていうライオンの持論が隠れたテーマになっています。

そんなライオンの優しさが身勝手なマックスの心をほぐしていきますが、ライオンの心が壊れていくのと裏腹に、マックスとの友情が深まっていく姿が切なく胸を締め付けます。

寡黙な映像は、若い映画ファンには退屈に感じられるかもしれませんが、ジェットコースターのような起伏に富んだ展開や目を見張るCGでは味わえない、登場人物の心情を静かな映像で表現する映画もたまには良いものですよ。
とりわけ、30代のアル・パチーノの瑞々しい演技は必見です。

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