瞬間移動

『夏と言えば、一番興奮するのが、上手に蚊を叩いたときだね』
『間違いないね!』

私が小学生の頃は、部屋の中に蚊が飛んでいる夏が日常でした。
子どもたちの腕や足には、蚊に刺されたであろう、赤い腫れが2つや3つあるのが当たり前。
腫れた部分に爪で十字の痕を付けると、かゆみが治まるという都市伝説もその頃は広く信じられていました。
今では、患部を悪化させるだけだとのことで、完全否定されています。

そんな、蚊との共存が当たり前だった当時、私たち世代が恐れていたのが、日本脳炎です。
当時は、毎年千人程度の感染者が発生していましたので、子どもたちにとっては、日本脳炎=死、のイメージしかありませんでした。
小心者の私は、蚊に刺される度に日本脳になりはしないか、怯えていたものです。
コガタアカイエカなる種類の蚊が日本脳炎を媒介するのですが、高齢になった今でも、彼らの忌まわしい名前は記憶の片隅から消えることがありません。

最近の家屋は、密閉された空間で、エアコンを効かせて生活していることから、部屋の中で蚊を見かけることも稀です。
日本脳炎も、私たち世代の集団接種の賜物で、年間で数えるほどしか感染しないそうです。

それでもたまに、エアコンの効いた部屋の中を、朦朧としながら(そう見えるだけかも)迷走している蚊をみかけます。
私の子どもの頃に比べると、明らかに動きは鈍くなっているのですが、なかなかうまく叩けません。
蚊を見つけるといまだに慌ててしまい、神主さんの柏手のように思いっきりバシッて叩いてしまい、潰れるどころか、まるで異世界にワープしたかのように忽然と姿を消してしまうから不思議です。

周囲を見回して見ても、先刻までフラフラ飛び回っていた彼の姿が見つかりません。
あれって、やっぱりどこかに瞬間移動してしまったのでしょうか。

と思って調べてみると、叩きそこなった蚊は、風圧であらぬ方向に飛ばされたり、衝撃で気絶してしまうことがあるらしく、一瞬どこかに消えたような錯覚を引き起こしてしまうらしんです。

それでもって、効果的な蚊の叩き方を解説している人がいて、柏手を打つように左右から叩くのではなく、上下で挟み込むように垂直に叩くのがコツなんですって。
蚊は逃げる時、何故か垂直方法に飛んでいく傾向があるのだそうです。

私の説なのですが、これって人間が常に左右から挟み込むように叩こうとするから、自然と彼らも垂直方向に逃げるようになっただけではないのか?

ちなみに、何の関係もありませんが、割りばしを割る時も、横に開くように割るよりも、上下に開くように割る方が、力が均等にかかってキレイに割れるというメソッドを読んだので、何度もトライしてみたものの、いまだにキレイに割れたためしがありません。
家族で外食する時、娘も同じように上下に割ろうとして、毎回失敗していますので、情報の出どころは同じようです。

さて、新しい技で蚊の抹殺を試みたものの、上下の動きで手を叩くのは普段しない動作なので、なかなかうまくいきません。
いつ蚊が現れてもいいようにイメージトレーニングは欠かさない(ウソです)ようにしているのですが、そんな時に限って蚊は現れません。
気温が35℃を超えると、蚊も自由に飛び回れないのだそうです。

先日、私の住む街が40.4℃を記録し、今年初めて日本一暑い地点になりました。
蚊と同じで、あまりにも気温が上がってしまうと、活動を停止してしまうイダログですが、日本一と言われると、まんざら悪くない気もするから不思議です。

タイトルとURLをコピーしました