シャープを創った男 早川徳次伝 / 平野隆彰

画像引用:Amazon

シャープの創業者、早川徳次氏の伝記です。

本書が発刊されたのは2004年、世界が注目した亀山工場が稼働を開始したのと同じ時期です。
その後、経営悪化により台湾の鴻海の傘下に入り、今年の8月には亀山工場の第2工場も生産を停止するそうです。
絶頂期にあった創業者の立志伝を2026年にあらためて読んでみると、早川氏の生涯に感銘を受けつつも、同社の栄枯盛衰には感慨深いものがあります。

早川氏は、物心つかない頃、事業に失敗した生みの親の元を離れ、その日暮らしの職人の家に養子に出されます。
極貧の少年時代を経て、職人として身を立てるべく奉公に出されますが、そこでも辛酸をなめ続けます。

生き別れていた実の姉や兄、同じく生き別れになっていた著名人(大正の三大美人の一人)の異父姉との邂逅、関東大震災での妻と二人の子との別れなど、小説のように波乱万丈な氏の人生は、単なるビジネス書とは一線を画す感動を呼び起こします。

養父はもとより、仕事を教わった親方夫婦、果ては少年の頃優しくしてくれた近所の老人まで、縁あってお世話になった人々のことを、最後まで面倒を見続ける早川氏の誠実な人柄には頭が下がります。
常に無私で、善き行いを心掛けてきた氏の生き方が、自然と成功を引き寄せていたのかもしれません。

そんな誠実さは、身内に対してだけでなく、教えを乞う競合他社にも惜しみなく与えられます。
また、生涯にわたって、障碍者就労にも力を尽くします。

1980年に早川氏が没した後、亀山モデルで絶頂期を迎え、その後凋落してくシャープの姿は、日本のモノづくりの凋落を象徴しているようにも思えます。
同時代を生きた松下幸之助氏同様、金儲けだけに囚われない、高い志を持った企業人がいなくなってきたことも、日本経済や日本のモノづくりの凋落と無関係とは言えないことが、本書を読んで感じられます。

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