映画も評判が良いようですが、原作の方を紹介します。
凶悪な殺人事件の容疑者として死刑判決を受けた主人公が、冤罪を晴らすため逃走し、自身を信じてくれる人々と出会い、絆を結んでいく物語です。
状況証拠の積み重ねによる判決が原因で、冤罪の被害も多い日本の司法制度ですが、本書では、真実がどこにあるのか、といったミステリー要素よりも、主人公が人を殺すような人間ではない、と思わせるようなエピソードを丁寧に積み重ね、”状況証拠による無罪”のごときものを構築しているように思えます。
終盤のエピソードには、それほど長いページが割かれていませんが、それまでの人間ドラマの積み重ねにより、主人公に感情移入できた読者には、冤罪の危険性に対する強いメッセージが感じとれると思います。