1時間24分のやや小粒なオランダ映画ですが、児童文学を読んでいるような、清冽で心優しい作品です。
原題は「My Extraordinary Summer with Tess」となっています。
一週間の予定で、家族とリゾートの島を訪れたサムが、島で暮らすテスとの出逢いを通じ”特別な夏(Extraordinary Summer)”を経験するというお話です。
邦題は、物語の底流を流れる精神的なテーマ、「地球最後の恐竜は、自分が最後の恐竜だと知っていたのか?」という、サムの哲学的な自問自答に基づいています。
しかし、そんなサムの深淵な思いとは裏腹に、テスのルーツ探しがドタバタを引き起こし、巻き込まれたサムも、家族や周囲の人々の善意と触れあう内に、自然と答えを見出していきます。
短い尺ながら、話の展開に無駄がなく、心満たされる作品です。
少年を演じた俳優がとりわけキュートですが、出番の短い共演陣も魅力的な人々ばかりなので、自然と物語全体に感情移入してしまいます。
登場人物一人ひとりが放つセリフも、シンプルながら心に刺さります。
あまり理屈っぽいことは考えず、素直に世界の善意を信じてみたくなるような気持ちにさせてくれる佳作です。