ワークマン式「しない経営」 / 土屋哲雄

画像引用:Amazon

著者は、同社専務取締役で、今話題の「ワークマンプラス」や「ワークマンシューズ」の仕掛人でもあります。

本書の冒頭で、要点が「しない会社」と銘打って列挙されています。

・社員のストレスになることはしない
=残業はしない。仕事の期限を設けない。ノルマと短期目標を設定しない。(とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ)

・ワークマンらしくないことはしない
=他社と競争しない。値引きしない。デザインを変えない。顧客管理をしない。取引先の変えない。加盟店は、対面販売をしない、閉店後にレジを締めない、ノルマもない。

・価値を生まない無駄なことはしない
=社内行事をしない。会議を極力しない。経営幹部は極力出社しない。幹部は思いつきでアイディアを口にしない。

バラ色のホワイト企業のように見えるのは、戦略のベースに思い切った選択と集中があるからだと思います。
ターゲット市場を絞り込み、競合が容易に参入できないブルーオーシャンを主戦場とすることで、「しない経営」が成立している面が大きいと思います。

自分が勤める会社とは経営環境が違う、と言ってしまうとそれまでですが、いくつかの戦略については、大いに参考になります。

例えば、”デザインを変えない”は、”継続品で勝負する”とも言い換えられます。
シーズン毎で新製品を出さないと、売上が取れないと思い込みがちですが、同社の製品は10年間継続することが基本です。

そのことにより、顧客は値引き販売を心配せず、プロパー価格で商品を購入できます。
生産の習熟度が上がることで、徐々にコストを下げていくこともできます。
現下の円安を考慮すると、継続品を基本とした戦略がいかに有効かがわかります。

“顧客管理をしない”も逆張りです。
顧客データをため込んでおけば、それだけで売上が増えた様に気になりがちですが、通常、同社の店舗に入ってくるお客は、瞬時に目的の商品を購入し、店を出ていきます。
短時間しか滞留しない顧客を、コストをかけて管理しても意味がありません。

一方、「製品がよければお客様は自然とくる」「お客様が自然とこないような製品は出さない」との記述も見られます。
お客が、同社の製品の品質と価格に絶対の信頼を置いており、接客しなくても売れる商品を市場に出している以上、顧客管理は不要ということでしょうか。

未顧客理解」で述べられていた、既顧客よりも未顧客の獲得に注力すべき、という考え方にも通じます。

また「ワークマンプラス」や「ワークマンシューズ」のように、同じ商品であっても打ち出し方を変えることで、更なる新規顧客の獲得に繋がる、とう点もまた、「未顧客理解」で述べられていた、「CEP」をいかに増やすか、という課題に通じているように思われます。

その他、販促戦略から人材育成、以前から話題になっていたエクセル経営まで、同社の戦略戦術が多岐にわたって明かされており、示唆に富んでいます。

ちなみに、本書は2020年に発行されていますが、その時点で「ワークマンシューズ」の出店を計画していたことが伺えます。
同じく「ワークマンレイン」にも言及されているので、いずれどこかの機会で実現するのかもしれません。

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