ディズニーCEOが実践する10の原則/ロバート・アイガー

画像引用:Amazon

原題は「THE RIDE OF A LIFETIME」となっています。
「人生最高の時」とpark rideをかけているんじゃないかと思いますが、
翻訳には自信がありません。
いずれにしても、洋画の邦題同様違和感を感じますので、
邦題から受ける先入観は忘れて、
娯楽作品のつもりで気軽に手に取ってみることをお勧めします。

昨年まで15年間ディズニーのCEOを務めてきた著者の、
ディズニー以前のキャリアからごく最近までの物語です。

先に紹介した「PIXAR」では、終盤に少しだけ登場します。

「PIXAR」の方が映画的なロマンチシズムだとすると、
本書はドキュメンタリーに近いように感じました。
どちらもビジネス書の枠にとどまらず、感動を呼び起こす良書です。

そしてまた、どちらの物語にもジョブスの存在が欠かせません。

アイガーは「PIXAR」でも、ジョブスから「すごくいい奴」と信頼されたことが
第三者であるローレンス・レビーの視点で書かれていますが、
本書では本人の言葉で、二人のさらに深い関係性が語られています。
ジョブスの魅力と傲慢さの両面がうかがい知れますが、
終始優しい眼差しで語られています。

PIXAR買収に至る経緯は、微妙に描き方が異なっているように読めますが、
意思決定の当事者の一方で、
しかもジョブスとの距離がより近かった著者の記述の方が事実に近いのかもしれません。
だからと言って「PIXAR」の記述がでたらめというわけではなく、
切り取った時間や著者の感じ方の違いなのかと思います。

本書では、PIXAR買収のエピソードだけでなく、
マーベル、ルーカスフィルム(=SW)、フォックスと、
近年のディズニーがその帝国を築き上げてきたプロセスが詳しく語られています。
内幕を知ったところで、
一ファンとしてして楽しんでいる作品達の見方が変わるわけではありませんが、
作品を見ただけでは想像し得ない部分、
大勢の関係者の思いや失望が、
海面下の氷山みたいにバックストーリーとして広がっていることが感じられ、
作品達により深みを与えてくれます。

成功体験として語られるSWについては、
ファンとしては意見の分かれるところかもしれませんが、
経営者の立場では興行収入で測るしかないのかもしれません。

「PIXAR」よりはビジネス読者を意識しているようで、
「リーダーの原則」が付録されていますが、おまけ程度です。
あくまでもディズニーの現代史を面白く読みながら、
自然とビジネスで参考になりそうな事柄が吸収できれば良いと思います。

ちなみに「PIXAR」では語られなかった、
同社の育ての親であるジョン・ラセターの退任の背景についても本書では語られています。

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