著者は、元オン・ジャパンの代表です。
ビジネス書ながら、前半は駒田氏の魂の彷徨が語られています。
幼い頃から喘息を患い、走ることが大嫌いだった駒田少年は、嫌なことから逃げ続け、逃げたことで自己嫌悪に陥り、逃避と後悔を繰り返しながら、Onを通じて走ることの楽しさ、走ることによって人と繋がることの楽しさに辿り着きます。
失敗続きの人生で、自死の寸前まで追い詰められた駒田氏の再生の軌跡は、大谷翔平さんのようにマンダラチャートで力強く夢を実現していく生き方とは、まさに真逆です。
だからこそ平凡に生きる私たちの心に刺さりますし、とりわけ人生に迷っている若い人にはお勧めしたい一冊です。
後半、挫折の末のオンジャパン立ち上げからは、本来のビジネス編に入ります。
一方で、前半部分の長い道のりがあってこそのオンジャパンでのブランディング戦略でもあります。
かつては、所謂4Pと呼ばれるマーケティングの基本に縛らていた著者は、挫折と再生の後「マーケティングとは何なのか」と言う自問自答への解として、オンジャパン独自のマーケティング戦略を見つけます。
そもそも人は「マーケティング」をされたくないのではないか?という気づきには、ハッとさせられます。
コミュニティの殻の中に入らない限り、殻の外から発信したメッセージは全てはじかれてしまうのではないか?
そんな仮説から、「コミュニティマーケティング」所謂殻の中でブランドメッセージを発信する、自らがランニングの世界に入りこみOnの仲間を増やしていく、という手法に辿り着きます。
販促予算に乏しい会社に身を置く私にとっては、大変触発されるマーケティング手法です。