
しつこいと言われそうですが、今敏監督の監督デビュー作「PERFECT BLUE」がNetflixで配信されました。
アニメには珍しい、幻想と現実が入り混じったサイコスリラーです。
1998年の作品なので映像の粗や古さは否めませんが、一つ一つの画面が高い芸術性を主張しています。
夢から現へ、現から夢への切り替えが絶妙なので、見ている方は、自然と主人公の混乱を疑似体験してしまうような演出が施されています。
アイドルとしてはいま一つ目がでず、女優への転身を図る主人公の未麻、未麻に自己の願望を投影するマネージャーのルミ、自分の理想像を崩そうとする未麻に憎悪を抱くストーカー、それに劇中劇で未麻が演じる役柄が重なり合い、現実の未麻と二重人格の未麻が、夢と現に入り乱れる様が、異様な美しさを感じさせます。
混乱しているようで、それぞれが不気味に溶け合い一体となっていくように思わせる今敏監督の演出が見事で、デビュー作から天才の片鱗を伺わせます。
全体的に鬱展開ですが、未麻にとっての不自然なハッピーエンドが、かえって不穏な余韻を残すサイコスリラーアニメの佳作です。