Hereafter

画像引用:Amazon

クリント・イーストウッドが監督し、マット・デイモンが主演した2010年の作品です。

ロッテントマトの批評家レビューは48%、視聴者レビューは38%とさんざんです。
しかも、日本公開の直後に東日本大震災が起こり、
津波のシーンが重要なポイントになっている本作は、
途中で上映中止の憂き目にも会いました。
スピリチュアルな内容も禍して、イーストウッド作品の中では地味な印象を拭えません。

賛否は分かれますが、米国よりも日本での評価が比較的高い作品です。
日本公開が2011年2月で、震災が3月でしたので、予言めいた胸騒ぎも感じさせます。

津波で臨死体験を経験したことにより、華やかなキャリアを失った女性ジャーナリスト、
死者と繋がる能力を持つが故に、当たり前の人生を失ってしまった霊能者(デイモン)、
双子の兄を事故で亡くし、喪失感から立ち直れない孤独な少年、
この3人の邂逅を軸に、死者との繋がりに癒しを見出そうとする人々の姿が、
優しい視線で描かれていきます。

このような精神性は、欧米では変人扱いされるようです(劇中でも言及されています)が、
その根っこには、宗教観の違いもありそうです。

そのような偏見をものともせず、公平な視点で描き切ったイーストウッドには、
他の作品における姿勢と同様、大いなる良識が感じられます。

震災の後、霊的な体験が多く語られていることは、
有力新聞をはじめとしたメディアでも紹介されているので、
ご存じの方も多いと思います。

本作にとって、震災の予言めいた因縁は重要ではありません。
作品のテーマは、生き残ってしまったことで罪悪感に傷ついた人々の癒しと再生です。
それを仲立ちするのが、失ってしまった大切な人への一途な思いなのですが、
まさにこの点こそ、神様と同じレベルで死者を敬う日本人の精神性だと思いますし、
本作が、日本人の心に響く所以だと思います。

私の世代だと丹波哲郎氏を思い浮かべ、変な先入観を持ってしまいがちですが、
丹波さんを知らない世代にはそんな懸念は不要なんでしょうね。
ラスト含め全体が優しさに覆われた作品ですので、
オカルト的なイメージとは無縁であることを付け加えておきます。

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