昨秋出版された「十二国記」(小野不由美・著)シリーズの最新刊です。
このシリーズの新刊は18年ぶりです。
知らない人には、何のことかまったくわからないと思いますが、
ファンにとっては、SWが10年ぶりに再開したこと以上の大きなイベントでした。
ラノベでしょ?と言われそうですが、
世界観の大きさは「指輪物語」にも匹敵し、
同時に、人がどう生きるべきか、
という深淵なテーマを掘り下げている素晴らしい作品です。
女子高生がパラレルワールドに巻き込まれる、
という、”いかにも”な設定からシリーズがスタートすることもあり、
ジャンルとしては確かにラノベなのですが、
海外の神話や伝承に対する作者の広範で深い知識が、物語に深みを与えており、
それでいて純粋な娯楽小説としてのカタルシスも得られるため、
文字通り読みだしたらやめられない面白さがあります。
会社を休んで一気読みするファンが続出したほどです。
ラノベと侮ると衝撃を受けること間違いなしです。
残念なのは、18年が経過し作者が歳をとったためか、
娯楽小説としての爽快感が後退し、やや文学的になりすぎている点でしょうか。
それでもすばらしい出来なのは間違いないのですが、
実は、まだ物語の全体像は明らかになっていません。
次回の新作が何時出版されるのかもわかりませんし、
もしかしたら、未完のまま終わるのかもしれませんが、
サブカルチャーの傑作であることは間違いありません。
もし、興味をそそられた方がいたら、時系列を間違えないように、
事前にネットで順番を確認してから読み始めることとをお勧めします。