新書版で手頃なページ数(251ページ)ですが、示唆に富んでいます。
コロナ禍にあって、益々使用頻度が高まってるスマホへの警鐘を鳴らす本ですが、
進化心理学的なアプローチがユニークで、
以前紹介した「サピエンス全史」に重なる部分も見られます。
狩猟採集民族としての本能は、いまだデジタル社会の進化に適応しきれておらず、
そのギャップが精神衛生上の弊害を生み出しているようです。
狙いはスマホへの警鐘と打開策の提案ですが、
それに付随し、現代社会の病巣が進化心理学的背景や科学的検証によって説明されている点も興味を引きます。
例えば、
・人前で話すとき”上がる”のは、失敗して共同体から排除される(狩猟採集民族では死を意味する)ことを恐れる本能である、
・うつは、自分が壊れないないようにするための警告フラグである、
・生存競争ではネガティブな感情や情報ほど優先される、
・手書きは非効率だが、記憶の長期化を促す点ではPCに優る、
・ミラーニューロン(人の痛みを感知する機能)を機能させるには、
・人と接するのが一番だが、その次は演劇の鑑賞であり、映画鑑賞では機能しない、
等々、興味深い記述が見られます。
後半では、スマホの弊害、特に若年層に与える影響について語られていますが、
概ね想像はつくものの、こちらも実証研究をもとに語られているため、一定の納得感があります。
最後も容易に想像がつくことですが、
継続的な運動により、弊害が除去されることが、進化心理学的に述べられています。
それほどセンセーショナルな内容ではありませんが、
皆が、漠然と気づいているスマホの弊害について、ある程度納得感のある説明が提示されており、
自身の行動を見直す契機にはなると思います。