アマチュア歴史家が、リチャード三世の実像を明らかにしようと奮闘した実話の映画化です。
主演は「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンスです。
持病を抱え、仕事も家庭もうまくいかない主人公は、シェイクスピア作品で冷酷な悪役として描かれたリチャード三世への理不尽な扱いに、自分自身の境遇を投影します。
歴史の素人ながら、真実を明らかにするため、仕事も辞め研究に没頭し、やがてリチャード三世の遺骨を発見するまでに至りますが、ここでもまた理不尽な扱いを受けてしまいます。
おまけに、遺骨の発見と言う歴史的偉業は成し遂げたものの、リチャード三世の実像は依然闇に覆われたままです。
それでも、時折主人公の前に現れるリチャード三世の幻影は、主人公の献身に満足し、戦に出陣していきます。
たとえ誰からも理解されずとも、自分の信念を貫ける者こそ、真に気高き者なのだ、と主人公を慰めているかのようです。
主人公とリチャード三世が心を通わせる演出は、ファンタジーとわかっていても心を揺さぶります。
説得力のある演出と、実話の持つ力ゆえでしょうか。
歴史は勝者によって書き換えられるのが常ですが、理不尽な評価にもめげず、胸を張って生きるリチャード三世と主人公の姿、人間の気高さが垣間見える佳作です。