鬼は外、福は外

「しまった!ドンキで鬼のコスチュームを買うの忘れてた」と、節分が迫っていることを思い出した婿君ですが、節分=鬼のコスプレしなきゃ、というのがZ世代の発想なんでしょうか。

子ども頃の記憶をたどってみても、リアルな鬼が幼稚園で暴れまわった光景は浮かんでこないんですが、最近は、鬼のコスプレをした先生方が、嬉々として園児を追い回し、阿鼻叫喚で逃げ惑う園児たちの地獄絵図が、全国の幼稚園や保育園で繰り広げられているようです。

幼子にトラウマ級の恐怖を与えて笑ってる大人たち見ていると、明らかに虐待だろ、って思ってしまいますが、幼稚園に勤める妻の話だと、保護者はいたってウエルカムだそうです。
普段から我がままばかりで言うことを聞かない子どもたちに、鬼の恐ろしさを思い知らせておけば、いざと言う時鬼の力を借りられると思っているようです。

私が子どもの頃は、一番怖かったのは母親でしたから、鬼の出る幕などなかったのですが、甘やかしてばかりで、大人の言うことをきかなくなった最近の子どもたちを躾けるには、鬼の力を借りるのが最も効果的なようです。

「鬼から電話」というアプリを使うと、簡単に鬼さんとコンタクトがとれます。
Alexaにお願いしても、鬼さんを呼び出してくれるんです。
どんだけ最近の若い親たちが、鬼さんに躾けをお願いしているかですね。

こんな調子じゃ、虐待にしか見えない豆まきのイベントに対し、どうぞもっとやって下さい、などと無責任なことを言う親ばかりになるはずです。

ちなみに、三歳の孫は、妻が勤める幼稚園に通っています。
妻が撮影した豆まき動画の中では、泣き叫ぶお友だちをしり目に、送迎バスの運転手さん扮する鬼に豆を投げつている頼もしい姿が映っていましたが、
「幼稚園の鬼の面はあんまり怖くなかったから、少しばかり手を加えて怖さを増しておいたぜいっ」
との食卓での妻との会話を怪訝な顔で聞いていた孫の瞳には、
(こいつ、まさか裏で鬼と繋がってるのか?)と言わんばかりの疑念が浮かんでいました。

さて、幼稚園で散々怖い目にあってきた孫ですが、夕食が終わってホッとしていたのもつかの間、今度は、ドンキの”なりきり鬼セット”に身を包んだ婿君扮する鬼の襲撃が始まりました。
幼稚園に続いて、まさか家にまで鬼がやってくるとは思っていなかった孫は、最初こそ気丈に豆を投げつけていたものの、昼間の緊張感から解放されていた矢先の急襲だったためか、「鬼は外!福は外!」などとあらぬことを口走りながら、すぐに泣き出してしまいました。

鬼の波状攻撃なんて、三歳児にとっては、ウォーキング・デッドのような恐ろしさだったに違いありません。

こんな虐待が全国で許されているのは、きっと文部科学省の遠大な計画に違いありません。
幼児期からトラウマを植え付けておけば、成人になった頃に効果が表れてきて、歌舞伎みたいな衣装のヤンキーさんたちが成人式で暴れ出した途端、会場の背後から鬼が現れ、行儀の悪い子どもたちを恐怖のどん底に突き落としくれるんじゃないかって楽しみにしています。

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