推し >ファン >好き

通期時、同じ時刻、同じ場所で、同じ人を見かけることってありませんか。
東京勤務の頃の通勤電車では、同じ時刻に同じ車両の同じドアから乗車していましたので、あっ、この人いつも見かける人だ、っていうことがよくありました。
着席している人の中にいつも見かける途中駅で降りる人を見つけた時なんか、素早くその人の前のつり革につかまって、運よく席をゲットできた朝は、世界一幸運な人間になったような気がしたものです。

今は自家用車で通勤していますが、最近、同じ車が前を走っていることがよくあります。
すでに生産を終えたホンダの軽自動のリアウィンドウには”E.YAZAWA”のステッカー、ナンバーはもちろん”830(ヤ・ザ・ワ)”。
前を走っているためドライバーの顔は見えないんですが、安全運転で、歩行者や合流車には道を譲る実直さを見るにつけ、きっとこの人は、永ちゃんを心の支えに真面目に仕事に打ち込んで、真っすぐ生きてきたんだろうな、などと「クリミナル・マインド」(FBI行動分析課のドラマです)だったら10秒でプロファイリングできてしまいそうな人生を想像しています。
決して、茶化しているわけではありません。
私も、20代の頃は「成りあがり」を愛読し、「RUN&RUN」を繰り返し鑑賞するほど永ちゃんには惚れ込んでいましたので気持ちはわかります。
不良に憧れるだけのへなちょこなファンだったので、怖くてライブには足を運べなかったんですけどね。

一方、20代の頃から一貫してファンを続けているのは、ユーミンです。
ネット用語では、ファンを一歩進めて、人にも是非勧めたい、という強い思いが籠っているのが”推し”だそうですが、私はあくまでも”ファン”です。
友人に中には、未だに山下達郎を神のように崇めている人がいて、車で遠出したときなんか、空間が歪みそうになるくら何時間も達郎をリピートしてくれますが、こう言う人は”推し”ですね。

昨年末、マリンメッセ福岡で、ユーミンの50周年記念ツアーのライブがありました。
今回は、ちゃんと声がでるかな、と心配しながらライブに臨むのもユーミンファンならではです。
数年前、ライブ終了後のすし詰めのバスで会場を後にした時、夫婦と思しきカップルの男性の方が、うかつにも「ユーミンも、だんだん声がでなくなってきたよね」などと軽口をたたいたところ、「人が良い気分に浸っているのに、なんでそんな悲しいこと言うのよ!」と半泣きの女性から満員のバスの中で罵倒される場面に出くわしたことがありますので、この事実は、気づいていても決してユーミンファンの前では口に出してはいけないことなんです。

今回も会場は圧倒的に高齢者で埋め尽くされていますが、未だに自分が若いと思っているのか、立ち上がって拳を振り上げる人も多く見受けられます。
前の方で一人が立ち上がると、必然的にそこから後の列の人は嫌でも立たざるを得なくなりますが、最後まで体力を温存しておきたいので、人垣の隙間から見える限り、椅子に根が生えたように動かないのがイダログの鑑賞スタイルです。
ところが「見えないから座って下さい」とわざわざ立っている人にクレームをつけに行く人を見かけるのも、高齢者が多いライブならではの光景です。

大規模なコンサートでは規制退場がかかるため、アンコール前に席を立つ誘惑にかられますが、これって本物のファンだったら許されないんでしょうね。

その昔、全盛期のスプリングスティーンは、アンコールだけで1時間近く演奏し、ファンを狂喜させてくれましたが、最近のライブは、事前にアンコールまで含めたセットリストがわかっています。
今回のユーミンも、アンコールは2回の予定でしたので、本物のファンなら2回目のアンコールが終わって会場が明るくなるまで残るべきなんでしょうが、混雑が嫌いな妻に促され、1回目のアンコールでそそくさと退席してしまいました。
永ちゃんのライブだったら、絶対怒られそうです。ユーミンのファンで良かった💛

40年来のファンを公言しながら、アンコールが終わる前に席を立つのって、本物のファンとは言えませんよね。
“ファン”から”好き”に落ち着いたってことで、何とかタイトルのオチに繋がりました。

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