これは、私は出張で家を空けていた三日間に起こった、家族を恐怖のどん底に陥れた、とある事件についてのお話です。
私の家は、生活道路から私道を通って奥まった場所、所謂、”旗竿地”に建っています。
通常は、宅配便や郵便配達など、当家に用事のある車以外が侵入してくることはありません。
そころが、その日は違っていました。
私が出張にでた日の午後、見知らぬ白い軽自動車が、入ってくるはずのない当家の前に停車しているのを、近所に住む娘が発見しました。
不審に思った娘がおそるおそる近づくと、白い不審車両は、いかにも”間違って侵入してしまいました”と言わんばかりに、当家の駐車場に少しだけ侵入するや、方向転換して走り去ったとのことです。
最近、世の中では物騒な事件が頻発しているため、気を付けるにこしたことはありません。
すぐさま娘は妻に報告し、防犯への備えを再確認した次第です。
ところが翌日、こんどは近所の娘の家の駐車場に、決して善良な市民には見えない、不審な男の姿が認められました。
窓からそっと男の姿を伺う娘でしたが、やがて男は周囲を気遣う素振りをみせながらも、どこへともなく立ち去っていきました。
これが不吉な事件の予兆ではないことを祈りながら、そそくさと立ち去る男の行方を、不安な面持ちで見守るしかできなかった娘です。
そして次の日、ついに事件が起こりました。
娘の家の前に建つ低層のマンションに、前日同様、人相風体の怪しい数名の男たちが集まってきたではありませんか。
やがて男たちは、意を決したようにマンションの2階に駆け上がると、大声をあげながらとある部屋のドアを叩き始めました。
「中にいるのは、わかってんだぞ!でてこい!」
静かな住宅街に響き渡る怒声。
私の”chicken優性遺伝子”を受け継いだ孫クンは、当然ながら恐怖に慄き、その日は一人でトイレに行くこともままなりませんでした。
たまたまその日、喉の痛みを訴え会社をズル休みしていた婿君が、ベッドでごろごろしていたのが幸いしました。
ちなみに婿君は、喉が痛いと口にしただけで、その言葉が”言霊”となって自身の体に戻ってきて、本当に喉が痛くなって熱がでてしまう特殊能力を持っています。
すわ、家族の一大事とばかりに、マイホームの二階に駆け上がった婿君は、窓から男たちの挙動を伺いながら、すぐさま110番に通報。
「前のマンションで、何か事件が起こっています!」
ニュース番組で怪しい声に変換され、目撃情報を説明する自分の姿を妄想しながら、ズル休みしていることも忘れアドレナリン全開の婿君です。
数十分後、警察署からの折り返しの電話が鳴り響きます。
「すんまっせーん😅お騒がせして申し訳なかです。さっきん連中は、ウチの署の刑事ですけん、怪しかもんじゃなかとです」
最近の映画なんかでは、善悪の境界が曖昧なヒーローが登場することが多いのですが、実際の場面でもそんなことがあるんです。
凶悪犯が護送されているニュースなんかを見ていると、パトカーの中のどの人物が犯人なのか?皆が恐そうな顔をしているから、わからなくなることってありますよね。
毒を持って毒を制すとばかりに、悪を退治するには、悪よりももっと恐ろしくなければらない宿命を背負った、”お巡りさんあるある”でした。
孫クンがトレイに行けなくなるほど強面のお巡りさんたちによって、私たち市民の安全が守られていることに感謝です。
※ちなみに、結局何の事件だったのかは、分からず仕舞いです。
