図書館の魔女 第四巻 / 高田大介

画像引用:Amazon

前々回の更新で第一巻を紹介したばかりですが、第四巻の本作で一旦完結しましたので再度紹介します。
(スピンオフ的な続編や前日譚も発刊されており、あらたなシリーズも昨年からスタートしました)

小説の醍醐味は、虚構の世界にいかに現実感を持たせ、読者を物語に引き込めるかにあります。
本作はまさに、虚構の最たるファンタージの世界を描きながら、その世界観は緻密に構築されており、まるで現実世界で繰り広げらている戦乱や政争を再現しているかのような現実感を味わうことができます。

言語や会話と言ったコミュニケーションに対する深い洞察には引き続き驚かされるばかりですが、作者の本業が言語学者であることを知り、あらためて納得がいきました。
言語だけではなく、民俗学や古典の素養にも裏打ちされた本作は、文学作品としての格調とミステリー小説の娯楽性を両立させた、ファンタジー文学の金字塔と言える傑作です。

第二巻以降、主人公の二人、図書館の魔女マツリカと従者の少年キリヒトの絆の深まりと並行し、二人が暮らす大国「一の谷」と、相対する北の大国「ニザマ」での政変が、第三国を巻き込み戦役の様相を呈し、コミュニケーションの力により戦役を回避しようとするマツリカや彼女を支える人々と、戦役を望む勢力との戦いが繰り広げられます。

(ネタバレ注意!)そんな戦いの渦中、純朴な従者のキリヒトが、マツリカを守るために遣わされた人間兵器であることが明らかになってから、俄然展開に躍動感と緊張感が生まれてきます。

戦いの結末については、興味があれば読んでいただくとして、物語の終盤、已むに已まれぬ事情によりマツリカを裏切った末に自死しようとした仲間を命がけで助けたマツリカ、常はシニカルで傲慢な彼女が、初めて真摯に己が真情を吐露する場面は、本シリーズ最大の見せ場と言えます。

マツリカは、政争や戦乱が渦巻く世界の狂気の中にあっても、時代の狂気に抗い、自身の言葉を届けることで戦っていく決意を示します。
倒され死んでいった敵にも伝えたい言葉があったはずであり、相手の言葉を聞いてやらなければ同じ悲劇が繰り返されるからこそ、言葉を届けることを決してあきらめるべきではないと語ります。
それが、図書館という知恵と知識の集積した場所を統べる自分の使命だと言い聞かせているかのように。

本作は2016年の刊行ですが、現在の世界の狂気への向き合い方を示しているように思えてなりません。

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