ロケット・ササキ / 大西康之

画像引用:Amazon

サブタイトルには「ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正」とあります。
シャープの元副社長であり、電卓で世界を席巻した工学博士でもあった佐々木正氏の評伝です。
「企業の天才!-江副浩正」を著した大西康之氏の著書を紹介するのは今回で3度目ですが、氏の手にかかると、実在のビジネスパーソンがまるで映画のヒーローのように鮮明な色を帯びてきます。

日本の高度経済成長期を支えた世界的な技術者である佐々木氏の周りには、ジョブスだけでなく、孫正義氏や、江崎玲於奈氏、西和彦氏、さらには李登輝総統まで、伝説的な人々が集まってきます。
佐々木氏を中心とした彼らの交流は、さながらヒーローが交錯するハリウッド大作のようです。

佐々木氏の開発哲学の中心にあるのは「共創」という概念です。
わからないことは教えを乞えばよい、聞かれたら教えれば良い、とばかりに、ライバル企業同士であっても、助け合い、切磋琢磨することでこそ技術が進歩していくのだという信念を大切にした技術者です。
知識や技術をブラックボックスにしまい込むのではなく、利他的精神で分け与え、自分達はさらに高みを目指すことでこそ技術が進歩していくと信じていた人です。

100歳を超えるまで、未来を見据えながら不断の挑戦を続けた佐々木氏は、電子立国日本の象徴のような人物でした。
また、無名の孫氏のために惜しみなく身元保証を与えたように、次の世代を担う若者の背中を押し続けた人でもあります。

常に歩みを止めず、一つの成功にとどまることなく、次を目指し続けた佐々木氏ですが、一方で、液晶一辺倒に陥ったシャープが衰退の道をたどったことは周知の事実です。
佐々木氏の目には、シャープだけでなく、日本経済全体が未来への歩みを止めてしまったかのように映っていたようです。

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