ループ・オブ・ザ・コード

画像引用:Amazon

以前紹介した「擬傷の鳥はつかまらない」の荻堂顕氏の長編第2作です。

前作は、ダークファンタジーとサスペンスの衣を纏いながら、原罪と赦しを描いていましたが、本作では、近未来SFとアクションというエンターテインメント的要素を通し、人間の存在意義に迫っています。

反出生主義、いわゆる、生まれてこないのが一番幸せではないか?という思想の問いかけに対し、主人公が答えを探っていくのが本作の主題です。

反出生主義というと、「進撃の巨人」のジーク・イェーガーが思いだされますが、本作の状況設定も、どことなく「進撃-」を思わせるところがあります。

過去の化学兵器使用により、世界からその存在を抹消され、歴史を封印され、欧米の手により、新しい国家として生まれ変わった架空の国が舞台です。

そこで発生した、子どもだけが罹患する奇病の解決と地下に潜った旧体制によるテロの脅威を封じ込めるため、国連配下の組織から派遣された凄腕の調査員が主人公です。

旧体制のテロの動機は反出生主義なんですが、主人公自身も生い立ちで受けたトラウマから、生まれてきたことや生むことへの疑問に苦しんでおり、テロとの戦いの中で、否が応でも自分自身と向き合い、折り合いをつけることを迫られます。

590ページと読み応えのある分量ですが、綿密な調査に裏打ちされたリアルな描写により、緊迫感が途切れることなく、長さを感じさせません。

前作に続き、唯一無二の作品を生み出す逸材だと思います。

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