バート・レイノルズが主演した2017年の作品ですが、
2018年に世を去った彼の遺作になります。
tomatometerは61%と、決して高評価ではありませんが、
イダログはなかなかの良作と思います。
バート・レイノルズと聞いても、若い世代は全盛期をイメージできないかもしれません。
肉体派セクシー男優枠だったので、最近の俳優だとロック様とかステイサムに近いのかもしれませんが、
レイノルズはもっと泥臭く、男性優位社会のアメリカを象徴するような俳優でした。
名作「ブギーナイツ」では、演技も評価されましたが、どの映画でも基本的には肉体派スターでした。
そこが、本作を読み解く上での足がかりにもなっています。
老いて世間から忘れられたアクションスターが、
地方(主人公の地元のようです)の映画オタクによる手作り映画祭に、
半ば騙された感じで招待されます。
根っからの横柄さで、周囲を不快にさせながらも、
主催者からあてがわれた運転手兼アシスタント(アリエル・ウィンターがぶっ飛んだ少女を熱演)
との交流の中で、人生を振り返り、ささやかな希望を見出していく物語です。
全盛期のレイノルズを知らないと、年老いた彼の哀愁には感情移入しにくかもしれませんが、
随所に過去の作品のワンシーンが挿入され、
現在のレイノルズと若いレイノルズが合成映像で会話するシーンもあるため、
彼を知らない世代も雰囲気は掴めると思います。
一般的にはセルフパロディー的な、哀歓に溢れたコメディー映画のように見られがちですが、
決してそれだけの映画ではありません。
物語の途中で、彼が「選択を誤った」みたいなことを口にするんですが、
これは肉体派俳優路線を変更しなかった結果、
肉体の衰えとともに、銀幕から忘れられてしまった悔恨を語っています。
最近のスター、スタローンやシュワルツェネッガーなんかだと、
自己プロデュースに長けていますので年をとってもしぶとく生き残っていますが、
レイノルズにはそんな器用さはなかったのかもしれません。
稼いで、浪費して、セックスして、飲んで、思い切りスターを演じきっているうちに、
いつの間にか老いて仕事もなくなってしまった、
そんな実際の彼を取り巻く状況が物語と切なくオーバーラップします。
しかしレイノルズは、この映画でそんな生き方を変えたかたんじゃないでしょうか。
老いたからこそ、肉体を誇示できなくなった今だからこそ、
演技派に転換できるチャンスと捉え、あえて惨めな役に挑戦したように思えてなりません。
今度こそ「選択を誤らないぞ」っていうレイノルズ自身の決意と将来への希望みたいなのが、
役柄を通して見えてくるところが、本作の最も素晴らしい点だと思います。
皮肉にも遺作になってしまいましたが、
役者としては満足のいくエンディングだったのかもしれません。