「ブレードランナーの未来世紀」の流れで、本作も紹介しておきます。
本家「ブレードランナー」の方は、ファンの間であまりにも長く語りつくされているので、
続編の「ブレードランナー2049」について書きます。
興行成績は、本家同様あまり振るわなかったようですが、
これはむしろ、ファンにとっては望むところです。
カルトなファン心理は複雑なんです。
「2049」も前作同様、賛否両論が目立ちます。
冗長すぎて退屈、ワクワク感がない、途中で見るのをやめた等々の評価が散見されますが、
前作も公開時の評価はさんざんだったので、恐れるに足りません。
イダログにとっては、
よくぞ前作の重圧に押しつぶされることなく、こんな良い作品がつくれたな、
と言うのが率直な感想です。
未だに見返してますが、確かに2時間43分と長尺なため、
時間と気持ちに余裕がないと、世界観にどっぷり浸かれないかもしれません。
前作は、デッカードと、感情が芽生え始めたレプリカントの関わりが軸になっていましたが、
極端に説明が省かれたことによる難解さがつき纏っていたものの、
見る者が想像力によって行間を埋めていったことで、とてつもない名作に育っていきました。
「2049」は、描写に時間をかけた分だけ、作品のテーマがわかり易く整理されているように思います。
前作がデッカードの視点だったのに対し、
本作はレプリカントのK(ライアン・ゴスリング)の視点で描かれています。
Kは自身を特別な存在と思い、自分探しを始めるんですが、
老デッカードとの出会いを通じ、不都合な真実を受け止めなければならなくなります。
それでも、自分の存在意義を確かめるかのように、自己犠牲的な行動にでる姿は、
前作のロイ・バティが、死を悟って下した決断以上に胸を打ちます。
また、Kとホログラムの恋人との関わりも、
前作のデッカードとレイチェルの関係以上に淡く切なく描かれています。
冗長と言えないこともありませんが、心情を丁寧に描こうとすると、そうなるんだろうな、
と納得もできますので、カルト的な前作を敬遠している人にも、本作はお勧めしたいと思います。