「ノマドランド」の4年前に公開された、
クロエ・ジャオ監督の評価を決定づけた作品ですので、
「ノマドランド」に心打たれた人には、是非こちらの方もお勧めします。
ロデオ中の事故で、後遺症が残るほどの大怪我を負った、
将来を有望視されていた若手ロデオライダーが主人公です。
本作も「ノマドランド」同様、背景にアメリカの貧困が横たわっていますが、
コアなアメリカを描きながらも、
ジャオ監督の演出からは東洋的な詩情が感じられます。
物語は実話に基づいており、しかも、
主人公とその家族を始め、ほとんどの登場人物が実際の人物によって演じられています。
フィクションとドキュメンタリーの境界が曖昧な作品ですが、
主人公は本職の役者としか思えないほど、味のある演技と存在感を示しています。
主人公が、後遺症と貧困に苦しみながらもロデオへの復帰を目指す道のりは、
決して希望に満ち溢れた再生物語でありませんが、
心の平静を取り戻すまでの姿を、カメラは静かに追っていきます。
主人公の心情が投影されたような、西部の美しい情景が印象深く、
映像に詩を語らせるような演出には、「ノマドランド」同様心を揺さぶられます。
芸術としての映画の可能性を感じさせてくれる良作です。