コレクション

日曜の朝「今日はいつもと違う一日を過ごします」と宣言した孫クン。
いつもの休日は、ママを誘ってお菓子作り(エプロンをして、生地を団子のように丸めるだけですが)などで過ごす孫クンなので、一体何を決意したのかと思えば、山積みになったパンフレット類を少し整理して処分しようという計画を思い立ったようです。
名付けて”パンフレット大作戦”だそうです。

お出かけした先々でパンフレットを見つけては持って帰ってくるものですから、おもちゃの棚がパンフレットであふれかえっています。
お気に入りの恐竜や”ちいかわ”が載ってるような可愛いパンフレットならまだしも、デイサービスの入所案内だったり、マンションの広告だったりと、どういう基準で集めているのか首を傾げたくなるようなものまで持って帰ってきます。

イダログは、子どもの頃からモノを集めることには興味がなかったのですが、本とレコードは集める気もなかったのに集まってしまい、今では本で600冊、レコードで200枚、CDで200枚ぐらいが納戸を占拠しています。
著名人なんかが、書斎の本棚にシェークスピア全集を並べていたり、壁にマイルス・デイヴィスのLPを飾ってたりするのをテレビなんかで見ると、オトナの書斎だなぁとか憧れますが、私の場合は、みうらじゅんとかリリー・フランキーが並んでいるため、こいつ変態かなとか思われるのが恥ずかしくて、むしろ人目につかないよう納戸に隠しています。

本の話は別の機会に譲って、今回はレコードについて書きます。

CDがレコードに取って代わったのが20代の半ば頃でしたので、かれこれ40年ほど前から、引っ越しの度にほとんど聴かなくなったLPレコードを持って回ってきたことになります。
本もレコードも引っ越しの時の大変さはご存じの方もいらっしゃると思いますが、特にLPレコードは大変な重さで、引っ越し業者さんから、一体この段ボールには何が入ってるんですか、って顔をされながらもずっと一緒に連れてきました。

CDが普及した後、ダビングしたカセットテープは全て処分し、レンタルCDをダビングしたCDも、サブスクの普及後全部燃えるゴミ(いつも分別に迷って市役所の案内を確かめます)に出しました。
だったらレコードも処分したらどうかしら?ついでにプレイヤーも必要ないでしょ?とか妻から言われそうなんですが、何故か簡単に捨てられない男の子の気持ちってわかっていただけますか。
今は、ほとんどの音源がサブスクで聴ける時代になりましたが、レコードのような形のあるモノには、聴覚以外の記憶が宿っているためなかなか捨てられないんですよ。
一方で、自分が死んだ後、うちのジイサンはこんなの聴いていたのか、って思われそうなものはできるだけ処分しておきたくないですか。
死んだ後は、バカにされている自分を上の方から見下ろすことも(多分)なさそうなのでどうでも良いんですが、恥ずかしいと感じるのは死んだ自分ではなく、生きてる自分なのですから、生きている間に整理しておきたいんですよ、ってちょっと何言ってるかわかんない、ですね。

長渕剛のCDを見つけられるのは、ちょっとした黒歴史ですが、当時は「とんぼ」を名曲だと信じて疑いませんでした。
永ちゃんの「アイ・ラヴ・ユー・OK」は、燃えるゴミに出したら罰が当たりそうです。
カーペンターズも、ちょっと恥ずかしいんですが、今聴いても良い曲ばかりです。認めます。

ところが、長渕さんも永ちゃんも、もう一度血迷って聴きたくなっても、全部サブスクで聴けるんです。
“フォークの神様”岡林信康(って知ってますか)とか高石ともやもあります。
さすがにディランⅡはないよな・・・、と思ったらこれもありました。

ってことは、曲を聴くためだけならLPレコードは必要ないんです。

タワーレコードは、創業当時、輸入盤の専門店でしたが、マニアックなバンドばかりを漁っていたイダログですから、インデックスに名前もなく、AとかBとか表示されたインデックスの中からお目当てのバンドを宝探しのように見つけるのは、とてもワクワクする音楽体験でした。
そして、両手の親指と人差し指を器用に使いながらレコードを漁る音楽体験には、輸入盤から漂ってくる”匂い”の記憶が伴っています。
「これがアメリカの匂いかね」と同じく九州から上京してきた友人に同意を求めると、「これはマリファナの煙が沁み込んだヤバイ匂いばい。アメリカのミュージシャンは、マリファナば吸いながら録音しよるけん」と言われ、「ほんなこつね・・・」などとバカ丸出しで納得していたウブな18の春でした。

ちなみに、”輸入盤+匂い”で検索すると、同じような経験をした人が大勢いて、皆さん”アメリカの匂い”と思っていたようです。

プレーヤーとレコードを所有していると、何となく音楽通でカッコよさそうですが、どちらも今では自室の”飾り”になっています。
サブスクの方が手軽なのですが、音楽のような形のないものも、レコードに形をかえると余計な記憶まで沁み込んでいてなかなか捨てられないものですね。

さて、孫クンの”パンフレット大作戦”ですが、紙切れに込められた5年足らずの人生の思い出に邪魔されたためか、大半は右から左に置き場所を移動しただけで、今までどおり、おもちゃの棚の占拠が続いています。

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