もののあわれ/ケン・リュウ(再掲)

画像引用:Amazon

一昔前は、中華SFがこれほど脚光を浴びるとは思いませんでした。
ヴィルヌーブの映画「メッセージ」の原作で有名なテッド・チャンはいましたが、
あくまでも別格で、中華というジャンルとは別物だったように思います。

最近の中華SFの中では、比較的読みやすく、
日本的な情緒性を備えた作品が多いケン・リュウはお勧めです。

出来の良さでは、第一短編集の「紙の動物園」の方がやや勝ってますが、
個人的には、
第二短編集「もののあわれ」に収められている「良い狩りを」が、
もっとも好きな作品です。

妖狐と妖怪退治師の話です。
伝奇小説の趣から物語が始まり、
主人公たちや、周囲の世界の変化とともに、徐々に物語自体の”色”が変化していきます。
やがて、スチームパンクに至るところで物語は終わりますが、
その変化のプロセスが、とてもシャープで、切なく、カッコいい!に尽きます。

ちなみに、短編集の冒頭の作品、表題作にもなっている「もののあわれ」には、
驚きの発見がありました。
世界的な小説の舞台が、まさか久留米市になっているなんて初めての経験です。

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