どっきりする話

大阪に出張すると、いまだにアウェイ感を感じます。

とりわけ緊張するのが一人飯の時。
大阪は、日本で最もフレンドリーな地域だと勝手に思い込んでいるので、レストランに入る時も「まいど!」って言わなきゃいけないんじゃないか、とか、注文する時も「豚玉にたこ焼きトッピングしてくれへんか」などと、一々ボケなきゃいけないんじゃないか、とか余計なことを考え過ぎてしまうものですから、ここはボクの居場所じゃない、みたいに身構えてしまうんです。

実際は、大阪でも中心市街地のお店だと、お客もお店の人も標準語が当たり前ですし、お客同士の会話は別として、コテコテの大阪弁が飛び交ってたり、お客とお店の人がボケとツッコミを分かれて漫才を演じる場面に出くわすこともありません。

九州弁は、他のローカルエリアの人に、どんな印象を与えているんでしょうか。

私は、一応福岡県出身ということにしてるんですが、実際は横浜で生まれ、幼稚園の途中までは横浜で暮らしていました。
また、父親は群馬県出身で母親は福岡県出身ということもあり、家の中では標準語を共通言語として育ちました。

そんな事情があって、未だに方言が板についていません。
どこの出身かわからないけど、ネイティブ並みに九州弁を操れる、みたいな感じです。

一方で、10代の大半を、大牟田というちょっと異質な文化圏で育ったためか、同じ福岡県内の久留米市出身の妻に対し、意味が通じない方言があります。

例えば大牟田では、指示語の「こそあど言葉」は、こげん・そげん・あげん・どげん、になります。
代名詞ではなく、副詞的な使い方で、意味は、このように・そのように・あのように・どのように、なのですが、大牟田以外ではあまり使われません。

タイトルに掲げた”どっきりする”(”ドキッとする”ではありません)っていう言葉も、大牟田弁に特有な言葉なので、今日は是非この方言を覚えて帰って下さい。

これは、脂っこいものとか、甘ったるいケーキとかを食べすぎた結果、胃がもたれて、ゲロ吐をきそうになってしまう状態を表す言葉です。

(使用例1)「こげん(このように)甘か(甘い)ケーキは、一つ食べただけで”どっきりする”ばい」
(使用例2)「揚げもんばっか食べたけん、”どっきりした”」

とか言う使い方をします。

私が知る限り、何かを食べた時に、美味しいんだけど、食べ過ぎるとゲロ吐きそうになる、っていう複雑な心境を一言で表す、便利で、美しい(わけない)言葉は、大牟田弁にしかありません!

二人の子どもは、生まれた時から”どっきりする”を当たり前のように聞いて育ったため、大人になるまで標準語と思い込んでいました。
最近では、奈良県出身の娘婿にも使用を許可し、少しずつ”どっきりする”の輪を広げており、いずれ標準語に紛れ込ませるのが、私の老後の夢です。

妻がよく行く美容室のオーナー店長が、佐賀弁・平仮名・小文字なし・句読点なしのメールを送ってくる母親に辟易していたそうです。
何て書いてあるかわからないからイライラする、と言うのですが、

「ぎゆうにゆうがのーなつとつたけんかえりにこーてきて(牛乳がなくなっていたから、帰りに買ってきて)」

確かに、何かの呪文みたいです。
途中で変換せずに平仮名だけにする入力方法が、逆に気になります。

モノマネが得意な娘も、私の転勤の関係で東京で生まれたことや家庭内標準語の影響で、コテコテの九州弁を話すと逆にわざとらしく聞こえてしまいます。
そこを逆手にとって、時折九州のオッサンのマネという、屈折したネタを披露してくれますが、結局、博多華丸さんのマネになっちゃってます。

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