庭に平和を、

「おい、ジーコ!(=私)、”猫のウンチ探し隊”に入ってくれ!」と帰宅した私が車から降りるなり、ストライダーに乗った孫クンから突然の勧誘を受けました。

隣に住む娘の家に、このところ連日猫がウンチをしています。
ネット上では、猫除けの有力な方法として粗い砂利を蒔くよう書かれていますが、何故か、娘の家の玄関の前の粗い砂利の上には、連日ウンチが鎮座しています。

猫除けとして推奨されている方法をものともしない猫さんたちの強い意志を目の当たりにすると、彼らにとっても「粗い砂利に足を取られるのって、めっちゃムカつくんだよね」などと言っていられないほど、已むに已まれぬ事情があるのでしょうか。
昔から、猫は自分を嫌っている人間を判別できるなどと言われていますので、明らかに怨恨の線が窺えます。
人間に対してさえ極悪非道な仕打ちができる娘なので、いわんや猫に対してをや(漢文の抑揚形って、今でもジョークとして通用しますか?)です。
普段から自分の家に近づこうとする猫さんたちを、砂をかけたり、水をかけたりして追い払っている娘なので、この度の攻撃も何となく頷けます。

そんなことがあって、孫クンは”猫のウンチ探し隊”の隊長に任命されたようで、最近上達したストライダーを駆って、猫の姿を見つけては恐竜の声(って実際にはどんな声なんでしょう)で威嚇し、ウンチを発見しては娘に報告しています。

孫クンにとって、家族の中で序列最下位の婿君の次に序列が低い私が隊員に任命されそうになったんですが、下手に猫さんたちの恨みを買ってしまっては、我が家が標的にされてしまいます。
「うがいと手洗いを済ませてから入隊しますから、ちょっと待っててください。隊長」とその場を逃れて家の中に引っ込んだものの、再び娘の家の様子を窺うと、娘が鬼の形相で猫のウンチを片づけていました。

ところが、キレイに片づけたにも関わらず、ほのかに漂う悪臭。
臭いの元をたどってみると、どうやら隊長の方から匂ってきているようです。
隊長がストライダーを漕いできた軌跡には、茶色の跡が点々と残っており、明らかに隊長自ら猫のウンチ踏んでおり、さらにはそれをバラまいてしまうという失態に、普段は強気の隊長も動揺を隠しきれず、素の4歳児に戻り涙目で謝り倒す始末。

我が家では何年もの間、猫のウンチに悩まされていたので、ここ最近矛先が変わったことは、むしろウエルカムなのですが、血の気の多い娘が、ネコ殺しに走ったりしないかが心配です。

今の場所に住み始めてすでに26年ほど経ちましたので、子猫が親猫になり、また子猫を生むサイクルを何度も見てきました。
愛らしかった子猫が親猫になり、さらに年を経てふてぶてしい老猫になっていくと顔つきまで変わっていくんですから、面白い生き物です。

不思議なのは、子猫が生まれると、何となくアイツの子どもだな、って見当がつくくらい顔を合わせる機会が多いのに、年老いて臨終した後のご遺体には遭遇したことがないことです。
あれってどこでお亡くなりになっているんでしょうか。
ネットで調べてみても、いくつかの説があるだけで、ハッキリとした答えが見いだせませんでした。
交通事故でお亡くなりになるケースも相当数あるようですが、そんなに沢山の猫が交通事故で寿命を全うするとは思えませんので、やはり、どこか彼らがひっそりと息を引き取る秘密の場所でもあるんじゃないでしょうか。
動物行動学では、猫は病気になると、体の不調を敵の攻撃と捉え、攻撃を避ける意味で身を隠すため、姿を隠してそのまま死んでしまうことが多い、という説が見られます。
だったらどこに姿を隠しているの?って言う点は、いまだに曖昧なままなんですね。

さて、根っからの善人にも関わらず執念深いところのある婿君は、誰かが猫に餌付けをしているのが原因ではないかと推理し、証拠探しに余念がありません。
「餌付けの現場を押さえられれば、裁判に持ち込めるらしいですよ。お父さん」などと、仕事そっちのけで復讐に燃えていますが、猫のウンチ裁判が最高裁で争われるのもネタとしては面白そうですが、ご近所と波風を立ててもらっても困るので、ほどほどにしてもらいたいものです。

これまで我が家では、猫除けに超音波やコーヒーのデガラシ、重曹等々試してみたんですが、さしたる効果はありませんでした。
結局、猫さんたちの矛先が変わったのを見るかぎりでは、できるだけ彼らの恨みを買わないようにしておくっていうのが、意外と一番有効な方法なのかもしれません。
婿君にバレないように、餌を与えて仲良くなっておくっていう手もありますが、執念深い善人から訴えられるのも怖いので、当面は猫さんたちと娘の抗争を、他人のフリして見守っていようと思っています。

タイトルとURLをコピーしました