原題を直訳すると”事業規模拡大の達人”となります。
様々な企業家(例えば、ビル・ゲイツ、ハワード・シュルツ、リード・ヘイスティング等々)が、事業規模を拡大するために何をなしてきたか、または、どんな挫折を経験したか、そこからどんな教訓を得たかが語られています。
それらの実例を、リード・ホフマンが分析し、纏めを提示するという構成になっています。
同じような試みとして、名著「ビジョナリー・カンパニー」がありますが、本書は、カンパニー(会社)単位ではなく、テーマ単位で、それぞれの会社や起業家たちの実例が記されています。
各テーマは目次を見れば明らかですが、第1章の「『ノー』から学べ」に始まり、第10章の「社会的なミッションを打ち出す」で締め括られています。
例えば、第6章「これまでの知識を捨て去る」では、フィル・ナイトの事例が引用されています。
高性能至上主義のナイトが、リーボックの急成長に驚異と感じ、高性能のシューズさえ作れば売れるという成功体験を見直し、ブランディングの大切さを認識したことで、現在のNIKEの成長に繋がった経緯が記されています。
これに対するホフマンの分析は「我々は常に永遠のベータ版(未完成品)なのであり、同じ知識、同じ戦法が延々と機能し続けることはない」「もし成功したいなら、以前とは違う作戦でいかなければならない」と述べています。
そこから導かれる纏めとしては、「知ったかぶり」ではなく「好学の士」になれ、自分がすでに知っている事柄とは距離を置け、進行しながら英知を集めろ、よき指導者になるため自ら学べ、実験と学びの相乗効果を図れ、といった理論が展開されています。
このように、各章のテーマに沿って実例が配置されていますが、それぞの会社や起業家の方法論は様々です。
手段は様々なれど、ビジネスを貫く法則が何となく見えてくる良書です。
話が前後しましたが、著者のリード・ホフマンは、ペイパル出身の投資家です。
締めの章では、社会貢献(善き行いをすること)が結局は会社の利益にも繋がる、というミッションの大切さが語られています。
ペイパルマフィアの出身者というと、何となく悪のイメージがつき纏っていますが、著者はバランスのとれた経営感覚を持った投資家のようです。