スターバックス成功物語 / ハワード・シュルツ

画像引用:Amazon

原題は、POUR YOUR HEART INTO IT となっています。
(コーヒーを注ぐ時)あなたの心をそこに注ぎ込みなさい、という感じでしょうか。

先ず、シュルツ氏は、コーヒーに対し並々ならぬ愛情を抱いています。
素晴らしいコーヒーを多くの人に広めたい、という理念に突き動かされて行動しており、
コーヒー文化の伝道者のようです。

彼にとっての頂点は、もちろんエスプレッソです。

理想主義的な考え方は、雇用面でも発揮されていますが、
貧しい生い立ちと、生涯日陰を歩んできた父親の影響が大きかったようです。
父親のような、努力しても報われない人を作りたくない、
という思いが人間重視の経営を志向させているようです。

社員を家族のようにみなし、全員に健康保険を付与している企業は、米国ではまれです。
米国の医療系ドラマではお決まりになっている保険の問題は、
スターバックスの社員には無縁なのかもしれません。

また、全社員にストックオプションを付与し、経営に参画させています。
“パートナー”という呼び名は、決して飾りではないようです。

多少美化されているのかもしれませんが、
理想主義経営の歪に悩む姿も述べられているので、
あまり嘘はないのかもしれません。

シアトルの小さな会社からグローバル企業へと成長するにつれ、
管理やガバナンスが求められるようになり、
理想主義が徹底しにくくなることへのジレンマに悩みます。

フランチャイズ制の導入や、
フラペチーノを主力メニューに加えたこともその一つです。
いずれも、当初シュルツ自身は反対していた施策ですが、
理念と顧客志向を調和させることに悩みながら、常に挑戦する姿勢を失わないよう、
自分自身を戒め続けています。

また、組織的な経営が進んでくると、古くからの従業員が置き去りにされることがあり、
家族経営と近代経営とのジレンマにも悩まなければなりません。

シュルツ氏自身、冷徹にビジネスに徹しきれない弱さを自覚しており、
積極的な外部人材の導入により、自分の不得手な分野を補完しようとしています。
一方で、自分より優秀な人間を迎えることの恐怖心についても正直に吐露しながら、
会社を良くするためには「賢い人間を恐れるな」と述べています。

「人々と共に獲得する成功ほどうれしいものはない」という言葉には、
人間中心の経営を志す、シュルツ氏の理想が表現されているようです。

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