パヴァーヌ

画像引用:Amazon

タイトルは、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」に基づいています。
2026百想芸術大賞の映画部門、芸術賞(音楽)受賞作です。

主人公は、高級百貨店の地下で働く3人の若者です。
ミジョンは、知的で有能ながら地味な風貌が災いし、人目につかない地下倉庫で品出しに追われる毎日を送っています。
ギョンロクは、自分に自信が持てず目標を見失い、地下駐車場で誘導係のアルバイトをしています。
ヨハンは、百貨店の創業家と因縁があるらしく、何をするでもなく地下で無為な日々を過ごしています。

ギョンロクは、地味ながら繊細な感性を持つミジョンに魅かれるうちに、徐々に自分を取り戻していきます。
ムードメーカーのヨハンは、そんな二人の背中を押してやり、華やかな世界から弾き出された3人は、徐々に友情を育んでいきます。

自分を見失ったギョンロクに対し、ミジョンがふと漏らしたネイティブアメリカンの言葉が本作のテーマを言い表しています。
「インディアンは馬で速く走り過ぎた時、自分の魂が追いつけるよう時々立ち止まって後ろを振り返る」
だから、今がギョンロクにとって、馬を降りて立ち止まっている時なのだと。

人は誰しも、心と体がバラバラになったような不安感を味わいながら生きていきますが、少しだけ立ち止まって、心を取り戻すことの大切さを、本作も物語っています。

地味な女子に魅かれるイケメンの話ですから、通常であれば”あざとさ”が鼻につきそうですが、そうならないのは、随所に脱力したユーモアが挿入されているからでしょうか。
シリアスになりそうなところで寸止めし、”抜いて”見せる演出が効果的です。
張り詰めた緊張感にあえて水を差し、ちょっと外してみることで、体から離れた魂を取り戻そうとするかのようです。

決して多幸感を味わわせくれる作品ではありませんが、とぼけたユーモアにも支えられ、鑑賞後に爽やかな余韻を残してくれる佳作です

タイトルとURLをコピーしました