普段は愛読していない作家さんなんですが、本屋大賞受賞に加え、歴史小説と推理小説の融合という発想に惹かれて読んでみました。
黒田官兵衛が、荒木村重の城に幽閉された有名な史実が作品の舞台です。
織田の軍勢が迫らんとする有岡城の中で起こる奇怪な事件の謎を、村重が官兵衛の知恵を借りて解決していくんですが、それぞれの事件が全体として歴史を動かす伏線(そこはフィクションですが)にもなっていて、歴史小説と推理小説が、綾を織りなして進んでいく面白さがあります。
また、村重の謎解きに協力しながらも、一方で、冷徹な心理戦を挑む、大河ドラマのイメージとは一味違うサイコな官兵衛像も楽しめます。
ショーン・コネリー主演の映画に、宗教性の強い史劇と推理物の娯楽性を融合させた「薔薇の名前」っていう傑作がありましたが、やや趣が違うものの、「薔薇の名前」同様、重厚さと娯楽性の両方が楽しめる佳作です。