旧東ドイツのスーパーに入社した無口で訳ありの青年と、そこに努める人々との触れ合いを描いた作品です。
青年は、社会の底辺を歩んできたことが推察され、同僚たちは、東西統一によりやりがいのあった前職を失い、スーパーに転職したという設定です。
台詞が少なく、静謐な作品で、しかも、美男美女が演じているわけではなく、主人公の青年は、タランティーノを若くしたような(つまり、異様な面相の)俳優なので、感情移入しにくいかもしれません。
また、ドラマティックな事件が起こるわけではなく、青年と同僚との触れ合い、とりわけDVを受けている同僚の人妻との関係も、適度な距離を保ったまま、静かに進行していくため、一見退屈な映画ですが、根底にあるのは、旧東ドイツへの郷愁や出身者たちの貧しく、希望のない暮らしぶりです。
そんな日常の中にあっても、ほんのささやかな希望を頼りに、新しい世界に踏み出していこうとする、青年や同僚たちの姿が、静かに胸を打つ佳作です。