キム・ボラという女性監督が、メガホンをとった韓国映画の良作です。
14歳の少女の日常と心情を淡々と描いた作品ですが、少女か少年かを問わず、その年代の若者が抱える、ありふれてはいるが、居場所のなさや閉塞感を見事に切り取っており、誰もが共感できる瑞々しさを湛えています。
時代設定が1994年のソウルということもあり、高度経済成長下の韓国、男社会、家父長制社会の中での、女性の生きづらさも描かれています。
以前紹介した「mid90s」と同じ時代設定ですが、「mid90s」がスケボーを通じた外向きの心情の吐露だったのに対し、本作は内省的でしっとりした味わいがあり、西洋と東洋の価値観の違いを感じさせます。
劇的な展開もない138分は、気持ちが入り込めないと退屈に感じられるかもしれませんが、
一旦共感できれば長さは気になりません。
淡々とした日常が、終盤で非日常(歴史的な事件)と交錯することにより、
少女の心が大きく揺さぶられます。
誰もがこの少女のように、閉塞感のある日常に苛立ちながら、
実は、非日常と背中合わせに生きていることを実感させられます。