同志少女よ、敵を撃て / 逢坂冬馬

画像引用:Amazon

独ソ戦の最中、村を焼かれ母親を殺された少女が、
最強の狙撃手として、また人として成長していく姿を、
史実とフィクションを織り交ぜながら描く娯楽小説です。

作者は、デビュー作が最高評価でのアガサ・クリスティー賞を受賞し、
その後直木賞候補にも選出された逸材のようです。

辛辣なレビューも散見されますが、娯楽作品としては十分楽しめます。
493ページの大作にも関わらず、一気読みを誘う面白さでした。

“ライトノベル”という批判もありますが、これも読みやすさの裏返しでしょうか。
最後まで軽快な疾走感を失うことなく、読者を引っ張ってくれます。

一方、狙撃や戦闘の場面は、息をのむような緊迫感で描かれています。

史実との齟齬を指摘するレビューも見られますが、
あくまでもフィクションなので、独ソ戦の史実に疎い私にとっては、
物語の面白さを味わう上での障害にはなりませんでした。

リュドミラ・パヴリチェンコのような実在の人物を重要な場面と交差させる描き方も、
効果的に機能していると思います。

ちなみに、雪下まゆさんのカバーイラストがすばらしく、
ジャケ買いしたくなるほどです。
この人の描く人物は、目が異様に強い印象を放っていて、
空虚なのに、静かな怒りが見る者を突き刺してくるような不穏さを感じます。

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