Good choice!

仕事でお世話になっているお客様から、唐辛子専門店に連れて行っていただきました。
唐辛子だけで勝負するっていう、一点突破ブランディングのお手本のようなお店です。
ベースになる唐辛子に様々な香辛料をミックスし、自分なりのカスタムブレンドを作れるのが、
お店の”売り”になっています。

連れて行っていただいたお客様から、
是非カスタムブレンドに挑戦すべきとの勧めもあり、
場をシラケさせてもいけないので、
わー、面白そうっ、子供の頃から唐辛子をブレンドするのが夢だったんですよ!
みたいな顔して、テンションを上げて臨んだものの、
8種類の唐辛子に31種類の香辛料を掛け合わせる調合表を見た途端、
一気に戦意を喪失してしまいました。

そもそも素人が調合したものが、プロの調合よりも美味しいはずはないので、
フルオーダーはハードルが高すぎることをすぐさま覚り、
既成品ベースにトッピングするだけのセミオーダー的なヤツに作戦変更です。

当初のテンションはすっかり冷めて「で、どれがお勧めですかね…」などと、
オロオロしながら、一周回って元に戻ってきてしまうポンコツぶりでしたが、
ゆずベースの七味に、レモンを合わせるといった、
後で考えると、ゆずとレモンじゃ親戚同士じゃね、
レモンハイに柚子を絞って入れるのと一緒じゃね、
みたいな、唐辛子の調合でさえ冒険できない、ちっぽけな自分を発見しました。

関西人だったら、
「ナツメグとコリアンダーとシナモンを仰山混ぜて、カレー粉作ってくれへんか」
とかボケをかまして楽しめるんでしょうが、
普通の内気なオジサンだと、なかなか一線を越えられません。

選択肢が沢山あるのって、選択の余地がないのよりも、よっぽど悩んじゃいます。
一般市民がストレスなく選択できるのは三択までなのかもしれません。

唐辛子のカスタムブレンドほど複雑ではないものの、
SUBWAYでも軽くコミュ力を試されますよね。

どの食材を加減し、どのパンがピッタリかなんて、
よほど頻繁に食べていない限り、その場で咄嗟に判断するなんてムリ!
と言いながら、本当はソースとトマトを多めにしたいんですが、
ファストフード店で余計なコミュ力を発揮しても、
ガラスのハートはすぐに充電が切れてしまうので、
基本、クールに「おまかせでお願いします」としか言わないことにしています。

そんな時は、
本当は色々とカスタマイズしたいんだけど、今日はこの後アポが入ってて急いでるんだよね、
みたいな顔で”おまかせ”オーダーするのがコツです(って、何のコツかわかりませんよね)

私が住んでいる町でも、昨年SUBWAYが姿を消してしまいましたが、
日本での不振は、このようなコミュ力を試されるシステムも一因と言われてます。

ところで、アメリカでレストランを利用したことのある人はご存じかもしれませんが、
「すみませーん!」などとウェイターを呼びつけるのはマナー違反なので、
先ずは、テーブル毎に決まっているウェイターが来てくれるまで、
放置プレイに耐えて不安な時間を過ごします。
その後、大概、元プロレスラーみたいな巨漢の担当さんが、
ドリンク、アペタイザー、メインと注文をとりにくるんですが、
何を注文しようと「Good choice!」っていう気合の入った反応が返ってきます。

逆に何を頼んだら「チッチッチ(唇の前で人差し指を振るヤツです)、ソノchoiceハヨクナイゼ」
とか言い返してくるのか試してみたいものですが、実際そこで言い返されたりしたら、
「I want…、I want…、very much…●×△%」などとパニックになるだけですので、
「Good choice!」って言ってもらえると、
やったぜ、オレも一人前のニューヨーカーだ、みたいに勘違いできて、ホッとしますよね。

SUBWAYでも、トマトを多めにとか、玉ねぎは少なめに、とかリクエストする度に、
「Good choice!」とか褒めてくれたら、
あのややこしいシステムも日本に根付いたんじゃないでしょうか。
って、そんなことあるかい!余計うっとうしくて、日本から撤退じゃ。
SUBWAYの皆さん、聞かなかったことにして下さい。

さて、ドヤ顔でイダログオリジナル七味をお土産にもって帰ってきたんですが、
「あたし、七味より一味の方が好きなんだ」の一言で済まされてしまいました。
いましたね身近に。容易に「Good choice!」って言ってくれない人が。

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