鬼人幻燈抄 / 中西モトオ

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折り返しの7巻までで一旦記事にしましたが、全14巻を読了しましたのであらためて。
前回記事にしたのは、7巻の明治編まででしたが、以降8〜10の大正、11の昭和を経て、12〜14の平成編で結末を迎えます。

14巻も続くと、途中で中だるみしたり、尻すぼみになったりしそうですが、本シリーズに関しては、そのような懸念は皆無でした。
もちろん、社会風俗は時代によって変化しますので、昭和初期までの日本的情緒と、平成に入ってからの”学園モノ”のようなカジュアルさでは、だいぶ物語の空気感が異なっており、時代によって読者の好みが分かれるところかもしれません。

かつて、愛する人を奪われ鬼に生まれ変わった主人公の復讐譚として始まった物語は、奪った最強の鬼でもある妹が、この世の全てを滅ぼすと宣言した平成の世を迎えます。
しかし、近代化が進み、夜でさえ煌々とした人工的な光に照らされる現代では、鬼たちが隠れる闇は消え去り、刀に代る近代兵器は、高位の鬼でさえ蹴散らしてしまえるほどの威力を発揮します。
人に害をなしてきた鬼たちも、平成の世では時代に忘れ去られたマイノリティーにすぎません。
主人公の妹が人の世を滅ぼしてくれることを願いながらも、その先の未来を描けない鬼たちにとって、最終決戦を迎えても心は空虚なままです。

終盤にさしかかるにつれ、居場所を失った鬼たちとは対照的に、限りある命にもかかわらず、前の世代が次の世代に思いを伝えていくことで、永遠の生を得る人間の強さが際立ってきます。
単なる伏線と回収ではなく、長い年月を経て、人から人へと伝えられていく、熱い思いや絆が、思わぬ形で邂逅する場面の数々には心を打たれます。

憎しみ合った者たちに訪れる結末が、爽やかな余韻を残してくれる傑作和風ファンタジーです。

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