電車萌え(前編)

先日、福岡県久留米市から、電車を使って長崎県佐世保市に出張しました。

佐世保は子どもの頃暮らしたことがあったので、どんな路線からは朧げに記憶していたんですが、
数十年ぶりに利用した長崎本線の佐世保線は、
鉄道オタクでなくてもネタになりそうな路線でした。

往路の鹿児島本線からは、鳥栖駅で長崎本線に乗り換えます。
鳥栖駅は、九州の交通の要衝なので、駅のホームも数が多いんですが、
乗り換えとか、特別な用事がない限り福岡県民は素通りすることが多い駅です。

交通の要衝なんですが、
「世界の車窓から」に出てくるミャンマーの駅を想像してもらった方が良い駅です。
予算がないから建て替えられない可哀そうな駅なのかと思いきや、
実は、築年数130年以上の、九州でも最古、日本でも最古の駅の一つだそうで、
文化遺産的な価値があるため、あえてリニューアルしていないようです。

佐賀県への偏見を排し、曇りのない目で見てみると、
確かにホームの屋根の骨組みはイギリス製のレールでできており、
鉄道オタクでなくても思わず目を見張ります。

九州外の人のために、簡単な相関関係をお話しておくと、
佐賀県と福岡県は、埼玉県と東京都のような関係にあります。
さしずめ鳥栖市は、川口市のような立ち位置ではないでしょうか。
川口市民が”ほぼ東京”を自称するように、鳥栖市民の大半は自分達を福岡県民と思い込んでいます。
あくまでも自己暗示をかけて思い込んでいるだけなので、福岡県民以外から、
「あんた、どこの出身ね」と聞かれると「ほぼ福岡ばい」と、
“ほぼ”を聞き取れないくらい小さく発音することで、福岡県民になりすまそうとします。
(ウソです。盛ってます。)

川口市の場合は、物理的に荒川で隔てられていますが、
鳥栖市は福岡県と地続きなので、
地図で見る限り福岡県の領土を侵食しているように見えます。
世界史の教科書で見た、騎馬民族の侵略を表す矢印を思い出させます。

九州自動車道を車で走っていると、
カーナビが「佐賀県に入りました」と言った数分後に「福岡県に入りました」とアナウンスするため、
何かの間違いじゃないかと思うくらい変な位置関係にあります。
そんなわけで鳥栖市民は、B級SF映画にでてくる、難破した宇宙船に乗っていたエイリアンが、
すっかり地球人と見分けがつかなくなってしまったみたいに、
今では福岡県民に混じって生活していらっしゃいます。

という風に、佐賀県民をいじるのが福岡県民の定番になっていますが、
私は、福岡県の南部、熊本県との県境にある県内でも有数の修羅の国の出身なので、
さしずめ、荒川の向こう岸に広がるタワマンに羨望の眼差しを向ける足立区民みたいなもんです。

そんなお茶目な鳥栖駅に入線してくる佐世保線は、
前4両のハウステンボス行きに、後4両の佐世保行き特急「みどり」が連結されていますが、
まったく趣の違う車両が連結されている時点で、すでに鉄道オタクの心を捉えています。

その上、佐世保行きの「みどり」は、出入り口が車両の前後ではなく、車両の中央についていて、
そこから両側に車室が分かれている不思議な構造になっています。
これって、どんなメリットがあるんでしょう。

“左回りの法則”っていうのがありますが、
一般的に右側か左側か好きな方を選ばせると、約70%の人が左側を選ぶそうです。
右脳と左脳の関係だとか、心臓の位置の関係だとか、利き腕の関係だとか言われています。
中央にデッキがあると左側の車室に偏るような気がするんですが、
じゃあ前後にある場合は、車両の右側の入口に人が集中するのかよ、ってツッコむのはやめて下さい。

車両が完成した時に、皆心の中で、(これ絶対、皆に笑われるだろ?)って思っても、
口に出して言えなかった、っていうパターンかと思っていましたが、実際は違ってました。
ネットで調べたところ、その昔、4両編成の特急を、自由席、指定席、グリーン車、禁煙、喫煙、
と細分化するための苦肉の策だったようですが、今となっては絶対皆後悔しているはずです。

さらに一時期、車体を赤く塗装した車両もあったらしく、
「赤いみどり」と呼ばれ物議を醸していたそうです。
♪あーかいキツネと緑のたーぬき♪みたいなもんですね。

早岐駅で、ハウステンボス行きと佐世保行きに路線が分かれるんですが、
置いてきぼりになった後ろ4両の佐世保行きは、なんとそこから後ろ向きに走り出します。
スイッチバックってヤツですが、山岳地帯以外では珍しいそうです。
USJの後ろ向きコースター状態なんですが、方向感覚がおかしくなって、
自分がどこに向かってるのかわからなくなります。
子どもの頃にも経験したことがあるはずなんですが、それほど強い印象が残っていないのは、
当時のディーゼル電車が、4人対面の固定シートだったからかもしれません。

現在の特急は二人席なので、座席を逆に倒さなくちゃいけないんじゃないかと、
周囲をきょろきょろ見回したんですが、
どうやら佐世保までは、後ろに流れる景色を楽しむのが暗黙のルールのようです。

しかも、早岐から佐世保までの区間は、
普通電車の停車駅には止まらないのに、何故か特急ではなく普通扱いにります。
乗車駅で特急券を買うと、切符に印字された行先駅は佐世保の手前の早岐になっていたので、
買い間違えたかと慌てたんでが、
これも沿線住民の利便性を考慮した佐世保線ならではの配慮らしいです。

佐世保駅からの帰りは、当然後ろ向きから走りださないと面倒なことなるのは想像がつきますが、
もしかしたら、最初だけノーマルな方向になっていて、次の早岐駅でシートを逆に倒すのかな、
とか思っていたら、想像通り後ろ向きで出発しました。

と言うことで、鉄道ブログみたいなものをダラダラと綴ってしまいました。スミマセン。
マエフリのつもりで”発車”したんですが、途中で佐賀県ネタに”脱線”してしまい、
“延着”してしまいました、っていう「笑点」オチで一旦終わりにします。

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