親切人間論 / 水野しず

画像引用:Amazon

奥付には”ポップ思想家/イラストレーター”と記載されています。
女優やアイドルとしても活動している水野氏ですが、文筆家としても秀逸かつ異能です。

ポップという言葉のとおり、日常のありふれた事象に哲学的な考察を加え、エッセイ風に噛み砕いて表現していますが、なかなか手ごわい文章です。
作者のような人が身近にいたら、理屈っぽくて面倒くさそうですが、嫌味に感じられないのは彼女のキュートさ故でしょうか。

「本は全部読まなくてOK」の項では、名著と呼ばれる本が存在し、そのタイトルから放たれる著者の影響力を吸収することができさえすれば、必ずしも読まなくても、本棚に所有しているだけでも素敵なことなんじゃないか、と問いかけています。
「自分のことを矢沢永吉だと思い込んでいる人々」では、実体としての矢沢ではなく、在り方としての矢沢を論じ、人類に普遍の生存スキルと位置付けています、

などと説明すると、小難しい内容を想像してしまいますが、要は、身近な生活の中に転がっているありふれたテーマであっても、思考を突き詰めることでもっと面白くなる、謂わば思考で遊ぶ楽しさを、”親切”に論じている稀有な思想書です。

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