火口のふたり

画像引用:Amazon

柄本祐さんと瀧内公美さんが主演した2019年の作品です。
ほぼ二人芝居で、しかもセックスと食事の描写が大半を占めており、その中で、グダグダとした他愛もない会話が交わされる奇妙な作品です。
原作は、直木賞作家白石一文氏の小説です。

レビューでは低評価が多いのですが、何故か心惹かれる、独特の空気感を持った作品です。
セックスと食事の描写に終始するも、セックスの方はエロスを感じさせません。
むしろ食事のシーンでの瀧内さんの演技の方にエロスが感じられほどです。
意図したものか如何かはわかりませんが、セックスと食事を地続きで捉え、人間の根源的な営みをテーマにしているように感じた、と言えば少し深読みし過ぎでしょうか。

お互いが好きで好きでたまらないダメ男とダメ女同士の交わりを見ていると、不思議なたくましさを感じてしまいます。
それが如実に浮かび上がってくるのが、震災との対比です。
二人の人生の背景には、自然災害で失われた多くの命が横たわっていることが感じられます。
生と死を大上段に振りかざすのではなく、繰り返される性の営みが、個人の力では抗えない自然の猛威に襲われながらも、たくましく生きる(=セックスする、食う)人間の強さを象徴しているように思えます。

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