気まずいランチ

予期せぬ場所で、予期せぬ知人に遭遇し、慌てることってありませんか。
時折食事もするような、仕事上の知人であっても、心の準備がないまま、出張の飛行機に乗り込む直前に出会ったりすると、何を話したら良いかわからず「ああ、ど、どうも・・・◎$♪×△¥」などと、慌てふためいて、そそくさと飛行機に乗り込んだりしちゃいます。

少し冷静になって、ああ、そう言えば、例の件、話しておけばよかったかな、などと思いながら、しばし一人機内で心を落ち着け、目的地に到着、いざ昼飯でも食べて仕事に向かおうかと、立ち食いそば屋の券売機で”かけそば”のボタンを押したところで「イダログさん」の声に振り返ると、搭乗前に遭遇した知人が後ろに並んでいるじゃありませんか。

別にカッコつける気はないんですが、立ち食いそばで、しかもその時に限って”かけそば”だったりすると、しまった見られちまった!感この上なしです。
誰かと一緒の出張だと、少し気の利いた店でランチしようか、って余計な気を回さなくてはならないんですが、一人の時は、目についた空いている店でさっさと済ませることにしています。

業界では多少名前の知られた二人なんですが、彼がカウンターから取ってきた丼を見ると、私と同じ”かけそば”だって言うんですから、一体私たちの業界はどうなっているんでしょうね。
私の方が年上なので、せめて差をつけて、”にしんそば”にでもしとけばよかったかな、などと思いましたが(そう言う問題じゃないって?)、二人して黙々とかけそばを啜りながら知人が漏らした「時間がない時は”かけそば”に限りますよね」などと言う何の慰めにもならない呟きに「ええ、私も時間が押してるものですから・・・」などと白々しく話を合わせつつ「じゃあ、しばらく(空港の)待合室で仕事してから移動しますぅー」などと、ついさっき時間がないと言ったことも忘れ、知人とはそこでぎこちなく別れ、それぞれの戦場へと向かいました。

立ち食いに限らず、まともなランチでも気まずさは付きまとうものです。
「イダログさん、何にします?」とメニューを見せられたら、先ず最初に消去するのは熱々の料理です。
私は猫舌なので、接待を受けている側であっても、熱々の料理を、味もそっちのけで慌てて口に放り込むのは、苦痛でしかありません。
前にも書いた記憶がありますが、九州ではポピュラーなご馳走の、”鰻のせいろ蒸”がまさに”ソレ”です。

次に配慮するのが、早く出てきて、早く食べ終えられそうな料理を選ぶ点です。
麺類が良いんですが、担々麺のように辛くて熱いのはダメです。
結局、汁のない麺類系か、中華丼のようにぐちゃぐちゃに混ぜて、機械的に口に放り込めるようなものを選ぶようにしています。

ところが、そこまで熟慮して選んだのに、自分の分だけ何時まで経っても出てこない時の気まずさったらありゃしません。
しかも、自分の料理が出てきたときには、既に皆は食べ終わっているわけですから「どうぞ、ゆっくり召し上がって下さい」などと言われ、ゆっくり召し上がっていられるほど肝は据わっていません。

結局、一人で立ち食いそばが一番気楽で良いんですが、極めて低い確率で、知り合いと肩を並べて”かけそば”を啜ることもあるんですよ。
「ところで○○さん、南ウィングに到着した時は、どこで食べるんですか」と尋ねたところ「到着口を出て、目の前にあるラーメン屋ですね」って、恐れていたとおり、自分とまったく同じ行動パターンじゃありませんか。

日本経済は好調だなどとと、岸田さんは勘違いしているようですが、地方の中小企業は、ぜんっぜん!楽じゃないんです。

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