朝井リョウ氏の小説の映画化です。
この世界に居場所のない、特殊な性癖をもった人々の抱える苦悩と、彼らが仲間との出会いによりささやかな救いを見出す姿が描かれていますが、一方では、多様性という言葉に対するシニカルな視点も見え隠れしています。
多様性と言う言葉で、マイノリティに居場所が与えられるか否かは、多数派の寛容に委ねられているという事実を、見る者に容赦なくつきつけてきます。
たとえそれが、犯罪や不道徳とは言えない特殊性であっても、多数派の基準において”気持ち悪い”と見做されてしまうと、決して居場所が与えられないという事実は厳然と存在しています。
作中、暗い淵でもがいているマイノリティの一人が、市民権を得つつあるLGBTQの押しつけに反発するシーンがありますが、多様性という概念が、所詮多数派の都合による相対的な線引きでしかないことを物語っているかのようです。
それはさておき、新垣結衣さんの演技はすばらしく、普段のドラマで見られる健康的な美しさをかなぐり捨て、マイノリティの孤独を見事に演じきっています。
決して明るい映画ではありませんが、静謐で深みのある良作でした。