少年の君

画像引用:Amazon

2019年の中国映画です。

中国映画と聞くと腰が引けてしまうかもしれませんが、政治的な価値観の違いなど軽々と超えてしまうような、誰の心にも響く傑作だと思います。

監督は俳優出身のデレク・ツァン、主演はチョウ・ドンユイ(周冬雨)とイー・ヤンチェンシーです。

いじめを受けている優等生の少女(チョウ)と底辺を生きる不良少年(イー)が出逢い、心を通わせて行く姿に、社会問題とミステリーを重ねて物語は展開します。

プロットを聞くと、ありふれた”ボーイミーツガール”を想像しますが、ツァン監督の演出と映像美、チョウ・ドンユイの見事な演技は、作品に高い芸術性を与えており、一つ一つの寡黙なシーンには命が宿っているようで、見る者の心を捉えて離しません。

世の中の正義を敵に回してでも少女を守ろうとする少年の決意と、少年を犠牲にするのがわかっていながら少年の思いに応えようとする少女の苦悩は、二人の名演も相まって、見ている側の心拍数が上がってくるほど真に迫ってきます。

ラスト近く、二人が無言で対峙し、表情の変化だけで演技するシーンは、映画史に残るほどの名シーンなんじゃないでしょうか。

エンドロールでの、とってつけたようなメッセージにシラケる人もいるかもしれませんが、まるで、本当に伝えたいメッセージを伝えるためなら、エンドロールぐらい習近平にくれてやる!と割り切っているかのようで、監督の矜持が伝ってきます。

重苦しく凄味のある作品ですが、最後は優しい余韻を残してくれます。

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